2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H01295
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀田 純 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (40568713)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 堆積物重力流 / 細胞外ポリマー / 津波 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、堆積物に含まれる細胞外ポリマーが重力流の発生および発生後の流動挙動に及ぼす影響について検討した。海洋底堆積物の模擬物質としてカオリナイト-石英の混合物、細胞外ポリマーの模擬物質としてxanthan gumを用いて、それらの配合比を変化させた試料を作成し(xanthan gum濃度: 0.1~0.5wt%)流動実験を行った。これらの試料についてフローカーブ測定を行ったところ、いずれもHerschel-Bulkley modelで記述される流動挙動を示すことが分かった。また、xanthan gumを0.1wt%添加するだけでも、分散液のレオロジーパラメータ(降伏応力、べき乗指数、コンシステンシーインデックス)は顕著に変化することが分かった。電子顕微鏡により分散液の微細組織を観察したところ、堆積物粒子表面にxanthan gumが接着することで粒子どおしを繋ぎ止めている様子が確認された。xanthan gumのこのような働きにより分散液の流動特性が大きく変化したと考えられる。 また得られたレオロジーパラメータに基づき、仮想斜面における重力流の数値実験を行ったところ、xanthan gum添加量の増加と共に流下距離は一様に低下し、0.5wt%添加した試料では、無添加の場合と比較して、その距離はおよそ半分程度に抑制されることが分かった。一方、重量流に伴う津波数値解析を行ったところ、生成される津波波形に大きな違いは見られなかった。以上のことから、海洋底堆積物中の細胞外ポリマーの存在は(あるいは人工的な散布による添加は)、一定のジオハザードリスクの低減効果を期待できるが、重力流の発生に伴う津波リスクに対しては大きな抑制効果は見込めないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度~昨年度前半にかけて、陸上地すべり(北海道胆振東部地震に伴う表層崩壊)の緊急調査を実施したことにより研究計画にやや遅れが生じていた。昨年度後半からは本来の研究計画を順調に消化できたことにより、いくつか興味深い成果を得つつあり、課題は順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは昨年度得られた成果を誌面にて報告する。またさらに異なるタイプの堆積物重力流を検討するため、特にゼオライトの物理化学的な性質に注目した実験に取り組む。
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