2019 Fiscal Year Annual Research Report
重力/歪・傾斜の連続観測と宇宙線透視の連携で拓く、火山体内部診断学
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18H01305
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大久保 修平 東京大学, 地震研究所, 名誉教授 (30152078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井口 正人 京都大学, 防災研究所, 教授 (60144391)
田中 宏幸 東京大学, 地震研究所, 教授 (20503858)
山本 圭吾 京都大学, 防災研究所, 助教 (40283676)
西山 竜一 東京大学, 地震研究所, 助教 (10835101)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 重力 / 地殻変動 / 火道 / 火山噴火 |
Outline of Annual Research Achievements |
観測面では、重力、地殻変動、及びミューオン透視観測が3本柱である。重力については、桜島の重力連続観測を令和1年4月から7月まで実施した。また、重力変動の誤差要因となる地下水についても、その潮汐成分を推定するために、桜島有村観測坑道の観測井における地下水位データを取得した。また、土壌水分の時間変化を推定するのに必要な毎時降水量データを国土交通省より取得した。これらのデータから、土壌水分変動に起因する重力擾乱をKazama and Okubo(2009)の方法で見積もった。地殻変動については、京大防災研究所による連続観測(歪・傾斜)を桜島において継続した。ミューオン観測については、桜島に設置済みの装置の受信面積をさらに増強した。 理論面では、火道内をマグマが上昇・下降する際に生じる地殻変動の定量的モデルを構築した。現実的な物性定数を仮定すると、一定量のマグマが地下深部からマグマ溜まりに注入されたときに生じる地殻変動は、開口火道系の場合、閉口系のそれに比して5%程度と極めて効率が悪いことが示された。他方、重力変動の大きさは、開口火道系であっても閉口系と同程度であることも明らかになった。 上記の理論にもとづき、今年度及びそれ以前の観測データとから、重力の時間変化から桜島におけるマグマ頭位を計算した。その結果を、桜島火口方向の傾斜・歪から推定される山体の膨張・収縮と対比した。その結果、山体膨張(収縮)に対応して、そのの1~3日後に火道内マグマの頭位の上昇(下降)が生じていることが分かった。これは深部のマグマだまりから浅部火道へのマグマ注入にともなう事象をとらえていると考えられる。マグマの上昇に要する時間スケールも1~3日程度と見積もられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観測面では使用する絶対重力計に不具合が生じたため、観測を年度途中で中断せざるを得なかった。しかし、開口火道の数理モデルを構築しその成果を、国際学会での発表および国際学術誌に論文として公表するなど理論面で大きく進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
重力データについては現状では1日平均のデータを作成し、これを基本データとしている。これは固体地球潮汐・海洋荷重潮汐を補正してもなお、地下水擾乱の日周および半日周の潮汐成分が重力値に混入しており、それが、1日より短いスケールでの火山性の重力変化をマスクしているためである。今後は、1日より短いスケールでの火山性の重力変化をも検出するため、地下水潮汐の高精度補正手法を確立することを目指す。
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