2019 Fiscal Year Annual Research Report
Identification of the chronological and spatial changes of the radiocarbon marine reservoir effect around Japan
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18H01310
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Research Institution | Museum of Natural and Environmental History, Shizuoka |
Principal Investigator |
中西 利典 ふじのくに地球環境史ミュージアム, 学芸課, 准教授 (10462582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
卜部 厚志 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 教授 (20281173)
七山 太 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 上級主任研究員 (20357685)
堀 和明 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70373074)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射性炭素年代測定 / 海洋リザーバー効果 / 完新世 / 沿岸堆積物 |
Outline of Annual Research Achievements |
核実験以前の海洋表層水に由来する放射性炭素年代値は,日本周辺においては大気起源の値よりも200~1000年古い.一方,九州から韓国沿岸の完新統に含まれる海生生物遺体の放射性炭素年代値は,同層準の大気起源の陸源植物試料よりも同程度古い年代値を示すことが報告されている.こうした海洋リザーバー効果は,海洋起源試料の放射性炭素年代値を暦年に較正する際の障害となるため,地球科学,自然地理学,考古学,歴史学などの学術分野で問題となっている.こうした問題を解決する糸口として,四国南西部の宿毛平野および九州東部の宮崎平野と大分平野,釧路市春採湖の完新統における研究成果を,Radiocarbonと第四紀研究,大分県温泉調査研究会報告,環境考古学と富士山にそれぞれ掲載した.また,釧路市,三陸海岸,関東平野,清水平野,濃尾平野,宮崎平野における研究成果を東アジアAMSシンポジウム,地球惑星科学連合大会,日本地理学会などで発表した.一方,日本周辺において同効果が最も大きい北海道東部の釧路市春採湖の沿岸砂州において,ボーリングコアを新たに掘削して高知大学海洋コア総合研究センターで高精度解析を実施した.その他,同効果の時空間分布を広域的に捉えるために,三陸海岸,関東平野,清水平野,濃尾平野,隠岐諸島,斐伊川河口,台湾南西部などにおいて既存のボーリングコア試料から年代測定が可能な植物片と貝化石が共存する堆積物を複数の層準から分取して,海洋リザーバー効果を評価する上で良好な試料を抽出・選定した.それらの内でより長期間にわたって同効果を正確に評価できそうだと判断できたものから順に年代測定を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画のとおり,釧路市,関東平野,濃尾平野,台湾南西部において既存のボーリングコア試料を用いて放射性炭素年代測定を実施して,海洋リザーバー効果の変化について地球惑星科学連合大会で発表することができた.また,当初の予定に無かった,三陸海岸や浮島ヶ原,清水平野,菊川平野,隠岐諸島などで得られたボーリングコアでも良好な試料を複数の層準から得られつつあるので,海洋リザーバー効果の時空間変化を評価することができると期待される.昨年度実施を見送った釧路市春採湖の新たなボーリングコア試料の採取は,湖と海を画する沿岸砂州において掘削して,当初の予定通りに高知大学海洋コア総合研究センターでCTおよびITRAX元素組成解析を実施した.これまで研究を進めてきた宿毛平野と宮崎平野,大分平野の研究成果がRadiocarbonや第四紀研究などの学術誌に掲載された.従来の方法では年代測定が困難である重さ1mg以下であった三陸海岸や台湾南西部の試料においては,韓国地質資源研究院で新たに開発された手法を導入することで年代値を得ることができた.当初予定していた新潟付近の沿岸では年代測定が可能な量の試料を確保することができなかったので,出雲平野で得られたコア試料を用いることにした.新型コロナウィルス感染対策の影響で年代測定の試料調整のために韓国へ渡航することができなかった.春採湖の既存コアから分取した試料のほとんどの年代値は再堆積の影響を大きく受けていたので,海洋リザーバー効果の経時変化を検討することができなかった.その原因は津波堆積物中の植物片や貝化石のほとんどは古い地層の中から供給されたためであると推定される.以上を総合すると,当初の研究計画よりもやや遅れていると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに放射性炭素年代測定を実施している釧路市,三陸海岸,関東平野,浮島ヶ原,清水平野,菊川平野,濃尾平野,出雲平野,隠岐諸島,宮崎平野,台湾南西部などのボーリングコア試料を用いることで,日本周辺の海洋リザーバー効果の時空間変化の実態を把握することを目指している.また,各地点で認定した同効果とそれらの層準の堆積環境や測定した貝の食性などの解析結果と対比することによって,同効果に差異を生じさせる原因について考察したいと考えている.それらの中から研究結果が出揃ったものから順に,国内外での学会発表や論文執筆をすすめている.それらの中で重要度が最も高いと考えられる研究成果に関しては,新型コロナウィルス対策で一年間に延期になった加速器質量分析国際学会等において発表して論文化できるように準備を進めている.日本近海で海洋リザーバー効果が最も大きい地域である釧路市春採湖の湖底と沿岸砂州の堆積物から同効果の経時変化を評価した上で,CTやITRAX解析,微化石分析などの古環境変化に関する高精度な解析結果と対比したいと考えている。その他の地域においても試料の質や量,共同研究者の研究計画などを考慮しながら研究活動を粛々と進める予定である.
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[Journal Article] Radiocarbon age offsets of plant and bioclast in the Holocene sediments from the Miyazaki Plain, southeast coast of Kyushu, southwest Japan2019
Author(s)
Toshimichi Nakanishi, Wan Hong, Mitsuhiro Kuwahata, Shinji Sugiyama, Shoichi Shimoyama, Ken’ichi Ohkushi, Tatsuhiko Yamaguchi, Jung-Hun Park, Gyujun Park, Futoshi Nanayama
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Journal Title
Radiocarbon
Volume: 61(6)
Pages: 1939-1950
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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