2019 Fiscal Year Annual Research Report
Refinement of biomarker-based paleovegetation analysis, and its application to reconstruction of the paleovegetational variation in the northern Japan over the past 5 million years
Project/Area Number |
18H01322
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
沢田 健 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20333594)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
力石 嘉人 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (50455490)
入野 智久 北海道大学, 地球環境科学研究院, 助教 (70332476)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 古植生解析 / 植物テルペノイド / バイオマーカー / 陸源物質輸送 / 日本海北海道沖 / 東アジアモンスーン / 分子内同位体分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、海底堆積物中の陸上植物由来バイオマーカーを用いた古植生指標を開発・検討する。特に分子組成・同位体比から植生そのものの記録と輸送形態・経路等の記録を分けて評価・復元する方法を検討する。その方法を国際深海掘削計画(IODP)346次航海において日本海北海道沖で掘削された堆積物コアに応用し、過去約500万年間の古植生・陸域古環境変動を復元する。また、植物テルペノイドと花粉の分析を同一試料で行い、それらの結果を直接比較して、花粉-テルペノイド植生解析データの対応関係モデルを体系的に構築する。これらの研究により、海底堆積物からの実用レベルの植物バイオマーカー古植生解析法の確立、鮮新世~現在の古植生・古環境復元データから北西太平洋(日本海)・極東アジアの北部における長期の陸域気候・環境システムを解明する。2019年度における主な研究成果は次のとおりである。 1.前年から引き続き、日本海掘削コアU1422(北海道留萌沖)の約30万年前の層準から現世(表層堆積物)の試料のバイオマーカー分析を行い、古水温指標であるアルケノンなど藻類バイオマーカー指標から、日本海北部の過去約50万年間の高時間分解能の古水温変動を復元した。その結果、氷期/間氷期変動の他に、融氷期における急激な環境変化パルスを見出した。 2.U1422コアの花粉分析がほぼ完遂し、過去70万~30万年前の年代で花粉組成と植物テルペノイドから推定される植生変動と比較した。温暖期におけるスギ花粉の相対量とスギ科ジテルペノイドの相対濃度の増加がよく同調することがわかった。 3.測定機に直接つながないオフライン熱分解装置(Sample-mobile pyrolyzerと命名)を設置し、比較的多量の試料を用いた熱分解分析によって堆積物中の難分解性有機物中に結合している植物テルぺノイドを検出・同定する分析方法を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本海掘削コアU1422 (北海道留萌沖)においてバイオマーカー分析による古水温データなど基礎データ解析と、共同研究者である五十嵐博士の花粉分析が早いペースでほぼ完遂した。U1423コア (北海道奥尻沖)と合わせて、過去約500万年間の古海洋環境・古気候変動の復元が実現している。一方、本研究課題の最も重要なテーマである陸源物質輸送および周辺の陸域の古植生の年代変動解析についても、ターゲットにするバイオマーカー分子や花粉の検討が進んでいる。オフライン熱分解装置(Sample-mobile pyrolyzer)も組み立て・設置することができ、難分解性有機物を対象にした分析も可能になり、深海堆積物からより多様・多角的な陸源物質の情報を得る方法が確立しつつある。ただし、植物テルペノイドの分子内同位体分析が遅れ気味である。従来、理論的な分析論にとどまっている新しい技術・方法を開発・検討するのに苦労しているという状態である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度(最終年度)は、日本海掘削コアU1422 (北海道留萌沖)試料の約30万年前から現在までの層準の植物テルペノイドバイオマーカー解析による古植生データをまとめる。これによって、U1422コアおよびU1423 コア(北海道奥尻沖)のすべての層準の植物バイオマーカーと花粉組成のデータが揃う。その後、花粉-テルペノイド植生解析データの対応関係モデルを構築する。植物生体試料を用いた実験も継続して、未同定の植物テルペノイドの構造決定を進めて、古植生解析指標の適用性を広げる。昨年度に本科研費で設置したオフライン熱分解装置(Sample-mobile pyrolyzer)を用いて、日本海掘削コア試料から効率的に多数の試料を分析する方法(ルーチン化など)を確立し、難分解性有機物に結合している植物テルペノイドのデータから陸域から海洋への輸送・堆積過程の情報を得て、植生情報と堆積情報を体系的に識別して古環境変動を復元することを施行する。また、植物テルぺノイドの炭素・水素同位体比分析、特に分子内同位体分析のために、針葉樹が合成するジテルペノイド酸の標準試料を用いて分析方法を検討する。 前半:上記の研究を進め、熱分解分析はルーチン化後に、当研究室の大学院生(研究協力者)の協力も得てデータを量産する。9月はじめに行われる日本有機地球化学年会(つくば市)においてテーマセッションまたはテーマ集会を企画し、国内の同様な専門分野の研究者と成果発表・討論会を行う。 後半:日本海掘削コア試料の分析をすべて完遂させる。研究成果について論文執筆して国際誌に投稿する予定である。できれば2021年2~3月に北海道大学において有機分子指標を用いた古植生解析に関係する研究者を集めて国際シンポジウムを開催し、成果発表・討論会を行いたい。
|
Research Products
(28 results)