2021 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms of shell spiral growth: a primer for Paleo-Evo-Devo
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18H01323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 一佳 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (80251411)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野下 浩司 九州大学, 理学研究院, 助教 (10758494)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貝殻形成 / バイオミネラリゼーション / 形態形成 / 軟体動物 / 貝殻基質タンパク質 / プロテオーム / 左右性 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は以下の4つの項目の研究を主に行った。(1)軟体動物の貝殻基質タンパク質(SMP)の分子進化学的研究、(2) Wnt遺伝子の貝殻形成への関与の分析、(3)クサイロアオガイ(Nipponacmea fuscoviridis)胚への遺伝子導入の技術開発、(4)L. stagnalisのSMP遺伝子の発現非対称性を利用した貝殻形成で重要なSMPの同定。(1)では軟体動物におけるZona pellucidaドメインを含むSMP(EGFZPとE G F L)の構造、機能、進化の解析と、頭足類のオウムガイに含まれるSMPのプロテオーム解析を行い、前者ではEGFZPが他のSMPsと相互作用できることとEGFLがカルサイトの貝殻の進化に関連している可能性が高いことを解明した。後者ではオウムガイが独自のSMPを持つとともに、SMPに含まれるドメインについては、頭足類以外の分類群のSMPと共通するものが多く見られることを明らかにした。(2)では胚をWnt促進剤で処理することで生じた変異個体をCTスキャンで撮像し、それを元に貝殻成長モデルにおけるパラメータ推定を行った。(3)では、lophotrochinとengrailedの2つの遺伝子をターゲットにCRISPR/Cas9のコンストラクトを作成し、受精卵への顕微注入を行った。処理した胚よりDNAを抽出し、PCR/シーケンシングを行うことで、lophotrochin遺伝子においてゲノム編集が起きていることを確認した。(4)では、L. stagnalisの右巻系統と左巻系統の交雑と再度の分離によってゲノムを均一化した左右系統それぞれ3個体ずつを用いて、外套膜をそれぞれ前後左右に4分割し、それらの(合計24個の)トランスクリプトームデータを得た。現在それらの比較を行い、前後や左右に特異的に発現する遺伝子の特定を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
貝殻形成の分子メカニズムを解明する上で、現時点で最も望まれるアプローチは、ゲノム編集等の技術により、遺伝子のノックアウト、ノックインを行い、個々の遺伝子産物のin vivoにおける機能解析を行うことだと考えている。これまでに貝殻形成に関与する遺伝子として、貝殻基質タンパク質(SMP)遺伝子やBMP、Wntなどのシグナル伝達因子の遺伝子、レチノイン酸合成酵素・分解酵素の遺伝子など様々な遺伝子の同定、構造解析、発現解析を行ってきた。これらはいわば外堀であり、それらを埋めることは、目的達成のための必要条件であり、前提条件である。それらの研究を行いつつ、今年度はさらに本研究課題の本丸とも言えるCRISPR/Cas9の実験を進め、クサイロアオガイにおいて、胚への遺伝物質導入の技術を確立し、ターゲットとした遺伝子の編集を生じさせることに成功した。それによる表現型の観察などをルーチンで進めるための技術開発がまだ必要であるが、それを進める上での問題点と解決策も明らかにしつつある。これらの理由から本研究課題はほぼ順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、今年度開発に成功したクサイロアオガイにおけるCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集の実験系を用いた、遺伝子ノックアウトの実験を中心に、研究を推進する。 貝殻形成において重要なSMPの推定では、今年度データを得た外套膜の前後左右の比較トランスクリプトームの研究を進める。解析を進める上で、24個のトランスクリプトームデータというデータの膨大さがハードルとしてあるが、まずは欲張らずにSMPとしてすでに同定されている407個の遺伝子に絞って解析を進め、一定の結果を得た後に、未知の重要な遺伝子の同定を進めたい。今後この研究を進めることにより、貝殻形成に重要なSMPの同定をさらに進めることができると同時に、左右性の本質に迫ることもできると考える。Wnt促進剤によって生じた変異個体についてはCTスキャンによる貝殻形態の詳細な観察を行い、理論形態モデルに照らし合わせて、どの成長パラメーターにWntが影響しているかの詳細な解析を進める。同様の解析をdpp遺伝子の阻害剤により生じた変異個体についても行うとともに、FGFやNotch等の他のシグナル伝達因子についても同様の解析を進める計画である。これらの貝殻形成への関与が疑われる遺伝子産物の機能解析については、CRISPR/Cas9を用いて遺伝子をノックアウトすることにより研究を進めたい。そのために、今年度確立したクサイロアオガイを用いた遺伝子ノックアウトの系にさらに磨きをかけるとともに、世界中の同業者が抱えているL. stagnalisへの遺伝子導入に関しても、囲卵腔への顕微注入の条件検討、ePore等の新しい遺伝子導入技術の応用等により問題の解決を図りたい。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Stasis and diversity in living fossils: species delimitation and evolution of lingulid brachiopods2022
Author(s)
Goto, R., Takano, T., Seike, K., Yamashita, M., Paulay, G., S. Rodgers, K. S., Hunter, C. L., Tongkerd, P., Sato, S., Hong, J.-S., and Endo, K.
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Journal Title
Molecular Phylogenetics and Evolution
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Hydrophilic Shell matrix proteins of Nautilus pompilius and the identification of a core set of conchiferan domains.2021
Author(s)
Setiamarga, D. H. H., Hirota, K., Yoshida, M., Takeda, Y., Kito, K., Ishikawa, M., Shimizu, K., Isowa, Y., Ikeo, K., Sasaki, T., and Endo, K.
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Journal Title
Genes
Volume: 12
Pages: 1925
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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