2018 Fiscal Year Annual Research Report
珪質微化石の殻に記録された海洋環境:同位体比および極微量元素の種レベル分析
Project/Area Number |
18H01329
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
板木 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (30509724)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀川 恵司 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 准教授 (40467858)
井尻 暁 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 高知コア研究所, 主任研究員 (70374212)
岡崎 裕典 九州大学, 理学研究院, 准教授 (80426288)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ディープラーニング / 微化石 / 古海洋学 / マイクロマニピュレーター / 微小粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,世界各地の海域から採取されてきた表層堆積物やプランクトン試料に含まれる珪質微化石の酸素同位体比および微量元素を種レベルで測定し,それらがどのような環境を反映しているかを検討することで新たな古環境指標の創出を目指す.例えば酸素同位体比の場合,もし有孔虫のように水温の影響を強く受けているのであれば,低緯度の表層付近に生息する種は低い同位体比を示し,逆に高い同位体比は深海域や高緯度の表層付近に生息する種に現れることが予想される.また,シリカに対する鉄やチタン,ゲルマニウムなどの微量元素の比率は,栄養塩濃度,陸域の風化や砕屑物供給量の指標として期待される. 小型の珪質微化石を種毎に分析するためには,大量の個体を単種で集積する必要があるが、この作業を手作業で行うには膨大な時間と労力が割かれるため現実的では無い.そこで,既に実用化している鉱物粒子の自動集積装置に人工知能の学習法のひとつであるディープラーニングによる微化石の自動分類技術を導入し,任意の微化石種を自動的に集積するシステムを構築した.このシステムにより,1日当たり4,000個体の微化石を自動的に拾い出すことが可能となった.現在、実用的な運用に向けてディープラーニングの分類モデルとマイクロマニピュレーターによる摘出精度の向上を図っている。今後,本システムで集積した微化石の酸素同位体比や極微量元素を測定し,古海洋指標としてのポテンシャルを評価する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たに開発した自動集積装置とディープラーニングの連携システムは,自動で微化石を分類し,それらを摘出するという作業を行うことが可能である.その分類精度は,当初の目標であった正答率90%を超し、また摘出成功率も80%まで向上した.現在,さらにマイナーな変更を加え,それらの精度の向上を図っている.また,同時に分析に用いるための微化石の集積も進めており,その準備段階としての試験分析を実施した.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに4種の微化石について正答率90%を超える分類モデルが構築されているが,今後,更に多くの種類の微化石についてもィープラーニングの教師データを整備し,ベーリング海,オホーツク海,日本海,北太平洋亜寒帯~熱帯域,南極海など,世界各地で採取された既存の表層堆積物やプランクトンなどの現世試料から珪質微化石(珪藻,放散虫,海綿骨針)を集積し,それらの酸素同位体比および極微量分析を実施する.それによって得られた結果と現在の海洋データとの関連性について検討し,古海洋指標ポテンシャルを評価する. 現世試料の検討から古環境指標としての有用性が認められた種の同位体比あるいは微量元素について,有孔虫が産出しないために古海洋記録の空白域となっている南極海および北太平洋亜寒帯域から採取された海底コアを用いて最終氷期以降の変化を明らかにする.表層種と深海種のパターンを比較することによって,鉛直的な海洋構造の変化について議論する.
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Research Products
(8 results)