2019 Fiscal Year Annual Research Report
高耐熱複合材料の健全性診断のための高温環境における超音波可視化技術
Project/Area Number |
18H01332
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 洋二 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (90313006)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 理 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (00795130)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 超音波非破壊検査 / 高温環境 / 可視化 / 耐熱複合材料 / 健全性診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、耐熱複合材料の高温環境における健全性を高い信頼性で診断することを目的とし、高温状態でも超音波ガイド波の伝播挙動を可視化できるシステムを構築するとともに、複合材の内部損傷が高温でのガイド波伝播挙動に及ぼす影響を理論解析によって明らかにする。 2019年度は、2018年度に構築した高温超音波可視化システムを、1000度の高温環境に適用することを試みた。まず、カンタル線の通電加熱に基づく小型高温炉を作製し、その中で厚さ1mmのセラミックス板を1000度まで加熱可能にした。そして、炉の上面の蓋に耐熱ガラス板を用いることで、炉の外側から内部へのレーザー照射を可能にした。さらに、内部のセラミックス板の底面に光ファイバを接着して、炉の外に配置した光ファイバセンサまで超音波を伝播させた。その結果、1000度に加熱されたセラミックス板に対しても、超音波伝播挙動の可視化動画を取得することに成功した。さらに、所得動画に3次元フーリエ変換に基づくデータ処理を施すことで、セラミックス板に導入した人工的な切欠き損傷からの反射波を捉えることができた。 一方で、本実験系におけるラム波伝播挙動を理論解析でも明らかにするため、2019年度は、2018年度に構築した理論解析手法に、温度の影響を考慮することを目的とし、実際に高温状態で計測したレーザー超音波の速度から、対象材料の弾性係数の変化を算出することを試みた。具体的には、超音波ラム波のS0モードとA0モードの群速度変化と、材料の弾性係数2成分の変化の関係式を理論的に導出し、伝播速度の実測値からアルミ板の弾性係数の300度までの温度上昇による変化を算出した。そして、その値を用いて超音波伝播の数値シミュレーションを行ったところ、300度までの加熱状態での、モード分散性の計測結果を良好に再現することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず、高温環境での超音波伝播の可視化計測システムについては、実際に基本的な計測システムを構築し終わり、1000度の高温状態においても、板材における超音波ラム波の伝播挙動を可視化することに成功している。しかも、データ処理を施すことで、人工欠陥からの反射波を明確に観察できている。ただし、当初は、異方性の耐熱CMCを対象として計測実証を行う予定であったが、本年度は、等方性のセラミックス板での検証となった。しかしながら、本システムの1000度レベルの高温での計測性能を、十分に評価することができた。 次に、超音波ガイド波の伝播挙動の理論計算では、半解析的有限要素法に基づいて、異方性複合材料構造におけるラム波のモード分散性を把握可能にし、数値解析では、有限要素解析法において、衝撃損傷部を剛性低下によってシンプルにモデル化することで、衝撃損傷がラム波伝播挙動に及ぼす影響を評価可能にした。さらに、理論解析手法に温度の影響を考慮するため、温度の影響を最も強く受ける検査材料の弾性係数の変化を、高温環境で計測したレーザー超音波の伝播速度から理論的に逆算する手法も確立できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、1000度まで加熱したセラミックス平板に対して、超音波伝播の可視化動画を取得することに成功した。ただし、加熱実験後には、光ファイバの樹脂被覆は熱分解によって完全に消失しており、ガラスのクラッドがむき出しになっていた。そこで2020年度は、本手法の実用性を高めるため、耐熱性に優れた光ファイバコーティング手法を確立することをメインの研究課題とする。現在、高耐熱性の炭状被覆をコーティング可能な独自技術を所有する中小企業と、コンタクトをとり始めた段階にある。 さらには、PSFBGセンサ自体の耐熱性を高め、センサ部を遠隔設置ではなく高温環境内に直接設置可能にすることも、実用上極めて重要である。そこで2020年度は、PSFBGセンサにアニーリングを施して高耐熱性のR(PS)FBGセンサにし、そのR(PS)FBGセンサでも高感度での超音波受信を可能にすることを検討し始める。 一方で、本実験系におけるラム波伝播挙動を明らかにするための理論解析手法において、温度の影響を考慮するための改良を進めてきた。2020年度は、実際に1000度レベルの高温で可視化した超音波伝播挙動の変化に基づいて、理論解析手法に導入する温度依存パラメータの検討を継続する。これにより、温度の影響を考慮したラム波伝播挙動の理論解析法の確立を目指す。
|
Research Products
(11 results)