2019 Fiscal Year Annual Research Report
高強度プラスチックのX線非破壊応力測定と変形強度評価
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18H01333
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
秋庭 義明 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (00212431)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | X線 / 回折法 / 高分子 / ひずみ / 機械的性質 |
Outline of Annual Research Achievements |
高強度高分子材料として,非晶質材としてポリカーボネート(PC)を,結晶質材としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を対象としてX線的応力評価のための基礎データを取得した.(1)ポリカーボネートに対して,塑性変形領域までの引張試験を実施し,塑性ひずみ量と回折線幅の関係について検討し,塑性変形量に対して線形に回折線幅が増加することを明らかにした.これより回折線幅から非破壊的に塑性変形量を推定することを可能とした.(2)ポリカーボネートの切欠き材に対して塑性変形域まで引張負荷を行い,上記の関係をもとに切欠き底における塑性変形量をコリメータ直径1mmの分解能で評価できることを示した.得られた結果は画像相関法による測定結果とほぼ一致することを示した.(3)ポリカーボネートの単軸引張塑性変形を負荷した部材を用いて,塑性変形領域におけるX線的弾性定数を測定した.塑性変形領域におけるX線的弾性定数は,若干小さめの値となった.(4)結晶性材料の高分子としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いて,X線的弾性定数におよぼす熱処理の影響について検討し,X線的弾性定数には,回折面依存性が大きいことに注意が必要であることを示した.(5)ポリカーボネートに対する環境応力割れ強度について,灯油環境の影響を検討した.切欠き半径および板厚が異なる試料を用いて,環境応力割れ強度に及ぼす切欠き半径の影響について検討した.負荷過程におけるクレーズの発生限界応力について着目し,切欠き底の応力分布より得られる臨界距離モデル(点応力モデル,平均応力モデル)によって強度が評価可能であることを示した.(6)白色X線を用いて,ポリエーテルエーテルケトンの応力測定の基礎データを取得した.測定対象として適用可能な回折面に対する自由度はさほど高くなく,またばらつきが大きく,測定精度を向上させる必要があることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非晶質材料であるポリカーボネートについては,おおよそ応力測定が可能であることを示すことができた.特に,複雑な前処理なしで,生のプロファイルをそのまま使用することができるという意味で,現場技術としての応用が期待できる.また,回折線幅法によるピーク位置を同定する方法が重要であり,定義の方法によって残留応力値の同定が困難になる.本研究では,あらかじめ対象材料の特性を把握しておくことで,残留応力評価を可能とする方法を示すことができた点が最も重要な事項である.結晶性材料については,対象とする回折面が同じであっても,成形条件(熱処理条件)の影響が大きいため,X線的弾性定数の適用に注意が必要であることを示すことができた.切欠き材の環境応力割れ強度評価に対しては,クレーズ発生限界に及ぼす切欠き半径効果,負荷速度効果を抽出することができ,臨界距離モデルを適用することによって,環境応力割れ強度の予測が可能であることを示すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
1)高分子材料の成型においては,部材表面と内部の分子配向の違いが存在し,X線応力測定においては,使用される特性X線の波長によって侵入深さが異なるため,特性X線の影響を明確にする必要があり,Mo,CrおよびCu特性X線に対して,X線的弾性定数に及ぼす特性X線の波長の影響を明らかにする. 2)非晶質材料についてはポリカーボネートを中心としてX線応力測定の有用性を示したが,他の非晶質材料について検討を行う.一部,塩化ビニール,アクリル等の回折プロファイルの調査済であるが,製造メーカーによっては,明確なハローが観察されない場合があることがわかったため,より詳細な検討を実施し,X線応力測定法の汎用性を高める. 3)結晶性材料については,ポリエーテルエーテルケトンのX線応力測定法について検討してきたが,他材料については,回折面が重なったり,測定中に回折ピークが消失する場合があることが明らかになったため,測定材料を拡大して,X線応力測定に適しない材料を明確にするとともに,成形条件の異なる材料に適用することで汎用性を高める. 4)残留応力評価に際しては,塑性変形に起因した残留応力を対象とする.表面近傍に高い残留応力が存在する場合の評価法を確立するために,表面を研磨,機械加工した場合の応力評価方法について,X線侵入深さの観点から検討する. 5)焼鈍された片側切り欠き材の環境応力割れに対して,臨界距離モデルの有効性を示したが,これを残留応力が導入された切欠き材に適用する.そのため,塑性領域まで引張もしくは圧縮変形された切欠き材を用いて,X線法にて残留応力を測定するとともに,環境応力割れ強度に及ぼす残留応力効果について検討する. 6)昨年度までに得られた成果および,上記で得られた成果をもとに,機械要素部材としての高分子材料のX線応力測定のための指針を提示し,実用に際しての注意点等を取りまとめる.
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Research Products
(2 results)