2019 Fiscal Year Annual Research Report
心臓原始形態モデルを用いた循環器システムの開発とエネルギー変換機構のモデル化
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18H01338
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
東藤 貢 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (80274538)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生体力学 / 心筋細胞 / エネルギー変換 / 細胞工学 / 粘弾性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の第一の目的は、ヒトiPS細胞由来心筋細胞(以下、hiPS-CM)を用いて作製した細胞シートと、生体適合性ポリマーを用いて作製した足場構造とを組み合わせて、自律的に拍動する基本的な原始心臓モデルを開発することである。次に生体内の循環器を模擬した実験システムを構築し、細胞内で生成された化学エネルギーが心臓モデルの拍動および流体の循環という機械的エネルギーへと変換されるエネルギー変換機構を実験的に評価するとともに、理論モデルを用いてその詳細について理解することである。研究期間の2年目である2019年度では、原始心臓モデルの素材としてのhiPS-CMシートの変形挙動を記述する理論モデルの構築、原始心臓モデルへの発展を意識した拍動する3次元構造体の開発を目的として研究を行った。得られた研究成果は以下の通りである。 (1) hiPS-CMシートの拍動挙動を高速撮影装置で撮影後、得られたデジタル動画を画像相関法を用いて解析することで、主ひずみの時間変動の計測に成功した。 (2) 能動的応力を表す理論モデルを導入して主応力の時間変動を求め、実験的に得られた主ひずみと組み合わせることで、応力-ひずみ挙動を求めることに成功した。その応力-ひずみ挙動は、粘弾性特有のヒステリシスループを描いており、粘弾性モデルの適用が有効であることが示唆された。 (3) 応力-ひずみ関係を示す構成則として、最も基本的な粘弾性モデルであるMaxwellモデルを導入し、上述の能動的応力の理論モデルと組み合わせることで、応力-ひずみ関係式を導出した。上述の理論-実験から得られた応力ーひずみ関係と良い一致をしめした。 (4) 円筒状に成形したPDMSの表面にhiPS-CMシートを貼りつけることで、拍動するチューブ状構造体の開発に成功した。さらに、微細な粒子を用いることで、チューブ内部の流動特性の計測に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究成果より、研究はおおむね順調に進展していると言える。その理由は以下の通りである。 (1) iPS細胞由来心筋細胞から作製した細胞シートと、生体適合性ポリマーであるPDMSを用いて作製した円筒状足場材料を組み合わせることで、自律的に拍動する3次元構造体としてのチューブ状心筋組織の作製に成功した。 (2) 細胞シートを用いて実験的に評価した主ひずみの時間変動と能動的応力の時間変動を組み合わせることで、拍動による収縮時の応力-ひずみ関係が、粘弾性的なヒステリシスを描くことが明らかになった。さらに、構成則として粘弾性モデルを導入して導き出した理論的応力-ひずみ関係が、理論と実験の組み合わせから得られた応力-ひずみ挙動とよい一致を示していた。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2020年度の研究の推進方策は以下の通りである。 (1) 開発に成功した自律的に拍動するチューブ状構造体の拍動挙動を高速度撮影装置等で撮影し、その拍動状態を定量的に精査する。特に、収縮・弛緩方向の主ひずみを画像相関法を用いて計測し、細胞シートの計測結果と比較検討する。さらに、2年目に構築した粘弾性理論モデルとの比較検討を行う。 (2) 微細な粒子を混合させた培地と動画解析システムを用いることで、チューブ内部の拍動に伴う流動特性について詳細に解析する。さらに、単純な円筒構造から発展させて、より強い流動状態を発現できるような新規構造について検討し開発を試みる。たとえば、弁の導入等について検討する。 (3) 動的有限要素法を用いて、構造体と流体の連成解析を行い、拍動するチューブ状心筋組織内部での流動状態の数値シミュレーションによる再現を試みる。 (4) (2)で開発した原始心臓モデルに培地循環用のポリマーチューブを接続し、単純な循循環器系実験モデルの構築を試みる。 (5) 最後に研究成果をまとめ、さらなる発展を目指して新しい研究プロジェクトの立案を試みる。
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Research Products
(1 results)