2018 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of multi-scale mass transport phenomena in catalyst layer for the development of the efficiency of polymer electrolyte fuel cell
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18H01364
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
徳増 崇 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (10312662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 元 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40336003)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 燃料電池 / 数値解析 / プロトン輸送 / 高分子 / 多孔体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度から今年度にかけて、分子動力学法により固体高分子形燃料電池触媒層内部のアイオノマー薄膜におけるプロトン輸送性能の解析を行った。まずは計算系の構築を行った。アイオノマーを構成する高分子はNafionとした。含水率は3とし、温度は350Kで計算を行った。このNafionの本数を変化させることで、アイオノマーの膜厚変化を表現した。まず計算領域内にNafion、オキソニウムイオン、水分子を導入し、系にアニーリングをかけることで平衡状態を達成した。その状態から、5nsの平衡状態の計算を行い、プロトンの平均自乗変位を計算することでアイオノマー内部のプロトンの拡散係数を算出した。オキソニウムイオンの輸送現象に関しては、Vehicle機構だけでなく、当研究室で開発したモデルを用いてGrotthus機構も考慮した。まずアイオノマー内部のプロトン輸送現象に関して、アイオノマー薄膜の膜厚に対するプロトン輸送特性の依存性の評価を行った。その結果、高含水率では膜厚にかかわらず拡散係数が高い値を示したのに対し、低含水率では全体的に拡散係数が低く、膜厚7nmで拡散係数の値が最大となる傾向が見られた。その原因を詳細に解明するため、アイオノマー内部の水クラスターの連結性に関する解析を行った。この研究では水分子を構成している酸素原子間の距離が、動径分布関数の第1ピークの谷間である3.6A以下であるものを、同一クラスターに存在する水分子と定義した。その結果、膜厚7nmのアイオノマー内部の水クラスターサイズが大き井事がわかり、厚さ7nmのアイオノマーでは、カーボン表面に吸着した高分子の側鎖とアイオノマー/気体界面に存在する高分子の側鎖がお互いに膜内部の方向を向くためアイオノマー内部に良好な水チャネルが形成され、そのため拡散係数が増大することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度から今年度にかけて、分子動力学法のシミュレータの構築が終了し、固体高分子形燃料電池触媒層内部のアイオノマー薄膜のプロトン輸送現象に関する知見が得られたため、平成30年度の課題に関しては終了した。ただ、この課題の遂行のため、めぞすけーるシミュレーションが若干遅れているため、(2)おおむね順調に進展している という評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定としては、まずプロトン輸送については、今年度得られた分子動力学法によるプロトンの拡散係数をマルチブロック法のシミュレータに実装し、触媒層全体のプロトン輸送特性の評価を行う。具体的には、昨年度得られたデータからアイオノマー内部のプロトン拡散係数を含水率・膜厚をパラメータとしてモデル化する。このモデルを研究分担者(井上)が既に構築したマルチブロック法における触媒層ナノ多孔体内部における物質輸送シミュレータに組み込み、ナノスケールの物質輸送特性を融合した触媒層全体の輸送特性評価シミュレータを構築する。マルチブロック法におけるシミュレータのパラメータとしては、空隙率、アイオノマー/カーボン比、屈曲度、相対湿度を考えており、評価指標としては、I-V特性を考えている。また中性子小角散乱実験から得られる触媒層のナノ・メゾ構造(含水状態での膜厚変化、アイオノマーネットワークの周期構造)の情報からシミュレータの妥当性を検証する。 また酸素透過については、昨年度の研究結果からアイオノマーの酸素輸送抵抗を化学ポテンシャルで評価すると非常にきれいにモデル化できることがわかっているので、この知見と昨年度までに得られたデータから、アイオノマー内部の酸素透過係数を含水率と膜厚をパラメータとしてモデル化し、マルチブロックモデルに組み込む。このシミュレータを用いて、触媒層全体のプロトンおよび酸素輸送抵抗に対する触媒層の特性量(被覆率、アイオノマー/カーボン比)依存性を評価し、触媒層のナノ・メゾ構造に注目してこれら輸送現象の発現メカニズムを解明する。
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