2019 Fiscal Year Annual Research Report
Negative viscosity induced by electroconvection in a nematic liquid crystal
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18H01374
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
長屋 智之 大分大学, 理工学部, 教授 (00228058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩下 拓哉 大分大学, 理工学部, 准教授 (30789508)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 液晶 / レオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
液晶の負の粘性は,電気対流が起こりえる誘電異方性が負の液晶で発現することがわかっていたが,シッフ塩基系の液晶のp-methoxybenzylidene-p'-n-butylaniline (MBBA)のみでしか発現が確認されていなかった。シッフ塩基系の液晶は,加水分解しやすいという応用上の欠点がある。そこで,ディスプレイ用の液晶を合成するメルク社の協力を得て,液晶ディスプレイ用の安定な誘電異方性が負の液晶を提供して頂き,それらの液晶で負の粘性が発現しないかを確かめた。3種類のディスプレイ用液晶に対して実験を行ったが,電気対流は起きるものの粘性率は電圧増加と共に減少することは無く,MBBAとは振る舞いが全く異なった。この結果について学会発表を行った。同じ時期に,共同研究者である北大の折原・小林は,シッフ塩基系のEBBA液晶で負の粘性を確認した。この系では,MBBAには見られない自発的自励振動があることがわかり,その基本的メカニズムの考察を行った。この発見について共著で学会発表および論文発表を行った。 EBBAでの負の粘性が発現することがわかったので,MBBAとEBBAの同族液晶での実験を計画したが,そのような液晶は市販されていなかったため,液晶合成を専門とする大分大学の氏家教授に研究協力を依頼し,MBBA,EBBAとはアルキル鎖の長さが異なるPBBA,BBBA液晶の合成を依頼した。そして,それらの液晶でも負の粘性が発現することを確認した。 負の粘性の発現機構を定量的に解明するには,高電場下の乱流状態における液晶の配向状態を知る必要がある。観測した乱流の顕微鏡画像から配向を推定するために,液晶試料内での光の伝播を4×4マトリックス法によって計算することを計画している。液晶の配向状態が複雑でない場合に関して計算可能になったが,複雑な場合はまだできておらず,今後の課題となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
液晶内での光の伝播の計算に関しては計画よりも遅れているが,負の粘性を示す液晶を新たに3種類発見したのは想定外の進展であったたため,総合的に判断してほぼ予定通りと評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
p-n-propoxybenzylidene-p'-n-butylaniline (PBBA) と p-n-butoxy-benzylidene-p'-n-butylaniline (BBBA)に関しては,まだ粘度測定を詳細に行っていないので,令和2年度はこれらの液晶について詳細な粘度測定を行う。また,MBBAの二量体に関しても負の粘性の発現が期待されるので,氏家教授に合成を依頼して粘度測定を行う。顕微鏡観察の動画像から,相互相関関数を用いて流れの速さを求める事を試みる。また,時間的に余裕があれば液晶の配向状態を光散乱で観測する実験系を作成する。液晶内の光の伝播に関しては,複雑な配向で計算ができるようにする。
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