2019 Fiscal Year Annual Research Report
圧電薄膜アクチュエータの高安定・高信頼性センシングと高精度制御
Project/Area Number |
18H01390
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
田中 秀治 東北大学, 工学研究科, 教授 (00312611)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 慎哉 東北大学, 工学研究科, 特任准教授 (30509691)
塚本 貴城 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70646413)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | センサ / アクチュエータ / 圧電薄膜 / MEMS |
Outline of Annual Research Achievements |
圧電薄膜マイクロアクチュエータは,位置決め精度とその安定性,および信頼性に課題を有する。その主たる理由は,高電界で大きく駆動させる状況で,既存の多結晶圧電薄膜に特性変化が生じることにあると考えられる。本研究の目的はその解決法を示すことにある。 高精度・高安定の歪計測が可能であれば,制御によって上述の課題を解決できる。これを実績のあるSi歪ゲージを用いて実現するため,PZT系圧電薄膜とのコンパチビリティ,ドリフト,スケールファクタ安定性などに関する学術的研究を行う。並行して,圧電センシングの不安定性が多結晶性にあると仮定し,研究代表者らが開発したSi基板上のc軸配向単結晶PZT系薄膜による歪計測について,安定性と信頼性に焦点を当てて研究する。 令和元年度には,センサとして埋め込みピエゾ抵抗を,圧電薄膜としてゾルゲル法によるPZTを用いたカンチレバー型のMEMSアクチュエータを試作した。その評価を行い,アクチュエータの変位をピエゾ抵抗で検出できることを確認した。これによって,埋め込みピエゾ抵抗とPZT圧電薄膜のコンパチビリティを実証した。また,スケールファクタを評価し,理論と比較した。これらは同オーダであるものの,数倍の違いが生じており,これは加工誤差によるところが大きいと考えているが,確認中である。スケールファクタの安定性,およびバイアス安定性の評価を予定している。 単結晶PZT系薄膜については,バッファ層の選択によって,信頼性を決める電流リークを大幅に減らせることを実証した。また,ナノインデンテーション試験を行い,クラックの生じやすさについて評価を行った。クラックを防ぐため,PZT薄膜の結晶性を単結晶から多結晶の間で調整することを試みたが,配向性との両立が難しいことがわかり,クラックを防ぐ方法は見いだせていない。今後,新たな発想でクラックを防ぐことを試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フィードバック制御できる圧電MEMSアクチュエータを実現するために,埋め込みピエゾ抵抗とPZT薄膜を用いてテストデバイスを試作し,その良好な動作をもって両要素のコンパチビリティを実証することは,本研究の大きな目的の1つである。本年度,この目的を達成し,安定性の評価などに進んでいる。 単結晶PZT系薄膜については,リーク電流を大幅に減らすことができたことは重要な成果である。単結晶膜が多結晶膜と比較してクラックが生じやすいという問題については,PZT薄膜の結晶性を単結晶から多結晶の間で調整するという新たな試みを行った。この方法では問題の解決には至っていないが,重要な知見が得られたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
埋め込みピエゾ抵抗とPZT薄膜を用いた圧電MEMSアクチュエータの試作を行い,その動作を実証した。この実験に用いたデバイスは,評価の過程で損傷が生じ,また,設計上・加工上の問題点が明らかになったので,これらをフィードバックした新たなデバイスを試作する。これを用いて,スケールファクタの安定性やバイアス安定性の評価,およびフィードバック制御のデモンストレーションを行う予定である。 単結晶PZT系薄膜については,微細加工技術を用いて膜にクラックの進展を止めるパターンを導入することを試みる。また,これまでの研究から,クラックは薄膜のエッジから生じることが多いため,エッジの形状を制御することを試みる。従来,単結晶PZT系薄膜のエッチングには,ウェットエッチングを用いていたが,この方法ではエッジ形状の制御性が悪いため,ドライエッチングを試みる。
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Research Products
(7 results)