2019 Fiscal Year Annual Research Report
多角的な接触力学情報を統合したフィールドロボット動力学シミュレータの創出
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18H01397
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石上 玄也 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (90581455)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 動力学 / ハードウェアインザループシミュレータ / 接触力学 / フィールドロボティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題2年目(2019年度)は主に,ハードウェアインザループ(以降,HILS)システムにおけるハードウェアとソフトウェアの統合を実施した.研究代表者のグループが有する単車輪走行試験装置をハードウェアとし,それに対応した簡易的な単車輪の順動力学モデルをソフトウェアとするHILSシステムを構築した.単車輪走行試験装置では,金属製の車輪が細かい砂地上を走行し,その際に発生する力学情報(駆動力など)を順動力学計算への入力値として与える.次に順動力学計算において得られる車輪の移動距離を単車輪試験装置へと入力し,実際の車輪の移動を再現するとともに,次時刻ステップにおける力学情報を得る,といったループをハードとソフトの両面から実装した.このHILSの構成を実現するにあたり,前年度より考慮していた時間同期問題やシステムの安定化問題についても解決を試みた.HILSの検証実験として,様々な牽引負荷を車輪に与えた場合や砂地上に埋め込んだ障害物上を走行する場合などを検証事例とし,概ね実現象に忠実な結果が得られた.本成果の特筆すべき点として,接触現象が連続的に発生しつつ接触対象が変形する「車輪と砂」という接触力学現象に対しても,HILSを実現しその有効性の示している点である. このほか,2019年度は,実験装置では多様な接触物体(例:不整地地面の砂の種類を変更するなど)を容易に扱えないといった問題を解決すべく,仮想的な実験方法として離散化要素法に基づく解析ソフトウェアを導入した.さらに,ロボット動力学シミュレータ環境の拡張として,前年度導入した動力学シミュレーションソフトウェアを,探査機着陸システムや不整地移動ロボットをユースケースとした諸問題への適用に継続して取り組んだ.また,同シミュレータとHILSとを連携させるためのライブラリの開発にも着手している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単車輪実験装置を用いたHILSシステムの構築し,不整地での接触が継続するような問題に対しても概ね実現象に忠実なHILSを実現することが出来た. HILSの基本的な枠組みが構築でき,さらに周辺ソフトウェアも充実したため,最終年度(2020年度)の進捗も予定通り進行できると考える.一方で,学術論文の発刊件数や会議発表件数が少なかったことから,全体の進捗成果として上記の区分にて自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の推進方策を下記にまとめる. 2019年度のHILSの成果を援用し,解析対象を車輪型の不整地移動ロボット,あるいは小型着陸機としたHILSの構築を試みる.前者の移動ロボットについては,国内の研究機関が有する不整地試験フィールドにて,実際のロボットを用いた走行実験も行いたいと考える.さらに,HILSによるシミュレーション結果と実験結果を比較することが出来れば,HILSの有用性を定量的に評価することができ,本研究課題の目的を十二分に達成すると考える.一方,着陸機に関するHILSについては,研究代表者のグループが有する3軸並進回転移動装置を活用し,移動ロボットと同様の方策にてHILSの構築を進めたいが,2020年度の状況ならびに人員の確保の点が不確定であるため,本研究課題においてこの取り組みはエクストラサクセスと位置づける. また今後の発展として,研究代表者のグループでは,低重力環境における粉粒体の振る舞いを考慮した研究課題も進めており,同課題から得られる情報,具体的には低重力環境下での砂のパラメータ変換モデルをHILSに組み込むことが出来れば,地上実験であっても低重力環境でのHILSを実現することが出来る.この方策についてもエクストラサクセスとしたい.
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