2019 Fiscal Year Annual Research Report
軟骨遺伝子転写応答のin-situフィードバックによる最適力学負荷システムの開発
Project/Area Number |
18H01398
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
山本 浩司 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (70536565)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森田 有亮 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80368141)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 軟骨再生 / 力学刺激 / in-situフィードバック / プロモーター / 力学場 / コラーゲン構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,軟骨細胞の転写活性変化や周囲の細胞外マトリックスの変化に応じて力学刺激をリアルタイムに最適化する培養システムの構築を目指している.そこで,本年度は正常関節軟骨組織が有する力学刺激の伝達特性をカルシウムシグナルを利用して実験的に解析し,応力分布の時間変動を粘異方性超弾性モデルによってシミュレートした.実験では生後6か月のブタ膝関節より採取した組織片を用い,カルシウム応答プローブを用いて圧縮ひずみやひずみ速度に対する輝度変化を計測した.実験結果と計算結果の比較により,輝度分布と類似した応力分布が見られ,軟骨組織の表層―深層間における刺激の伝達状況に関する知見を得た.次に多光子励起顕微鏡を用いて,周期的な引張刺激がコラーゲン構造体の凝集・分裂に及ぼす影響を経時的にモニタリングした結果,ひずみ量が小さいと一旦凝集したコラーゲン構造体が培養後期に細分化し,ひずみ量が大きくなると凝集が促進される傾向を見出した.遺伝子解析の結果,これらは細胞外マトリックスの安定化に関わるタンパク質の発現が関与する可能性が示された.また,二次元培養において力学刺激に対する遺伝子発現をCol2a1プロモーター遺伝子を利用して可視化し,基質産生を最適化するin-situフィードバックシステムの構築を目指した.本年度は,力学刺激に応答するプロモーター領域を決定し,それらを用いて力学場と遺伝子発現をリアルタイムにマッピングすることで発現量に応じて力学刺激を制御するシステムの構築を行った.また組織を三次元に拡張し,組織産生に加えて機能制御を可能とする培養装置を作製し,上述の結果を踏まえて潤滑機能成熟を目指した培養システムを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,予定していた軟骨組織内の力学場シミュレーションおよびカルシウムシグナルによる刺激伝播解析を完了し,圧縮ひずみやひずみ速度と軟骨細胞のシグナル応答に関する知見を得た.また,一定刺激に対するコラーゲン構造体の変化および遺伝子発現解析を行い,構造体の変化に細胞外マトリックスの安定化に寄与する遺伝子の転写が関わっている可能性を明らかにした.さらに,力学刺激に応答するCol2a1遺伝子プロモーター領域を決定し,Col2a1発現量を最適化する刺激パターン構築のプレ実験を行うなど,大きな進展が見られた.また二次元の力学刺激から三次元組織に拡張するなど,順調に研究計画を遂行できたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
二次元の平面培養におけるCol2a1遺伝子発現の最適化から,三次元組織における力学刺激に拡張し,マトリックス産生の増加のみならず,潤滑などの機能に関わる遺伝子発現に関する力学刺激の制御を目指す.また,三次元力学場と遺伝子発現のリアルタイムマッピングを可能とするアルゴリズムの構築を目指す.
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