2019 Fiscal Year Annual Research Report
片麻痺患者への理学療法士の介入の解明とリハビリテーションシステムへの応用
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18H01405
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
安 ち 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70747873)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 真吾 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, ユニットリーダー (20415186)
淺間 一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50184156)
宮井 一郎 社会医療法人大道会(神経リハビリテーション研究部), 神経リハビリテーション研究部, 部長 (60510477)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リハビリテーション / 起立動作 / 片麻痺 / 筋シナジー |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31年度においては,片麻痺患者の異なる運動障害の程度において筋シナジーの活動がどのように異なるのか調査した.具体的には初めに森之宮病院にて入院中の片麻痺患者33名に対して,Fugl-meyer Assessmentの下肢スコアに基づいて運動障害の中度な群(FMA≧20)と重度な群(FMA<20)に分類した.その中で,計測実験によって得られた起立動作中の筋活動から4つの筋シナジーを抽出し,時間的な特徴量に基づいて運動障害の異なる2群に分類するモデルをランダムフォレストによって構築した.その結果として,筋シナジーの特徴量を用いることで84.5%の精度で運動障害の違いを判別できることが分かった.その中でも特に,運動障害が中度な群は重度な群に比べて,椅子からの離床に寄与する筋シナジーの活動の開始時間やピーク時間,終了時間が有意に早くなっていることが分かった. さらに上記で構築した運動障害の識別モデルを使って,これらの患者に対する理学療法士の介入の効果を調べた.その結果として運動障害が重度な被験者では運動機能が改善する群と改善しない群に分けられることがわかった.特にこの両群を比較したところ,伸展を担う筋シナジー3の活動に違いがあることが分かり,理学療法士の介入によって運動機能が回復する人としない人では伸展する能力が異なることが示唆された. また理学療法士の介入技能を参考にしたリハビリテーションシステムの構築を行った.平成31年度は臀部の一部が持ち上がり,離床を支援するシステムを製作し,健常高齢者において検証を行った.その結果システムによる支援があった方が上体の前屈が減り,より健常若年者の起立動作に近くなることが分かった.ただし,試行によっては運動タイミングに合わせられず,運動機能の改善につながらないことがあり,今後さらに改善していくものとする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度までにのべ人数で79名の片麻痺患者の起立動作の計測を行うことができた.またそれらの患者の運動の解析を行ったところ,運動障害の重度な群と軽度な群において筋シナジーの活動に差があることが分かった.またこれらの患者のなかで経時的に計測を行ったものを解析することで,長期的な介入の効果を検証することができた.さらに理学療法士の介入動作をもとにシステムの原理試作機の開発および検証を行うことができた.以上のことから研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では,リハビリテーションシステムの研究開発を推し進める.特に使用者の運動タイミングに合わせられず,適切に支援できないことがあったのに対して,運動タイミングの同定を精度よく行うアルゴリズムの開発を行う.また運動障害の症状が異なる患者に対しても適応的に支援ができるように,支援をする速度や力を変更できるように,使用者に応じて支援の方法を変え,ヒトを対象とした実験においてその有効性を検証する.
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