2019 Fiscal Year Annual Research Report
生体分子モータで駆動する自律振動型人工筋肉の光造形とマイクロロボットの開発
Project/Area Number |
18H01407
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
平塚 祐一 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (10431818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新田 高洋 岐阜大学, 工学部, 准教授 (20402216)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 人工筋肉 / モータータンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は光造形可能な自律振動系を持った人工筋肉を開発することにより従来不可能であった自律遊泳するマイクロロボットの光造形を実現することである。最近我々は生体の運動タンパク質を遺伝子工学的に改造することにより光照射により溶液中の特定部位に人工筋肉を造形させることに成功した。この人工筋肉を利用して大きさ数ミリメートルの構造を駆動させることに成功しており、マイクロロボットの3次元光造形の可能性を開いた。しかしこれらのデバイスは光照射後の一回の収縮のみで実用には遠い。生体分子モーターには従来のアクチュエータと異なる様々な特徴があるが、その一つに自律振動が挙げられる。微生物の鞭毛や昆虫の飛翔筋等の振動運動は筋肉や鞭毛の構造の力学応答により自律的に振動現象を生み出されている。本研究提案ではこれまで我々が開発してきた人工筋肉の光造形法に鞭毛の振動機構を取り入れた自律振動する人工筋肉を開発する。本年度は、光照射によって形成する人工筋肉の安定性・収縮力の向上のための分子システムの調査を行った。その結果、安定性に大きく寄与する要因を見いだすことでき、人工筋肉の最適化や用いる分子モータの遺伝子工学的な改良が可能になった。また原料である鞭毛を効率良く調達するためにクラミドモナスの鞭毛の大量精製法のファーメンタを利用した自動化について検討した(平塚)。さらに人工筋肉の安定性について収縮の分子システムのモデル化とシミュレーションを行った(新田)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、光照射によって形成する人工筋肉の安定性・収縮力の向上のための分子システムの調査と最適化、用いる分子モータの遺伝子工学的な改良等を行った。その結果、本人工筋肉はpHにより安定性や収縮力が大きく変わることが判明し、分子システムの最適化や分子モータの改良のための指針を得ることができた。また、鞭毛の調達方法については、ファーメンタを改造しLED照明でクラミドモナスを大量培養する方法を試験した。クラミドモナスの鞭毛はジブカイン、pH、アルコール等の添加によって脱毛させることが可能であることが知られている。クラミドモナスの培養には数日かかるが、鞭毛調達ごとに再度培養するのは効率が悪い。そこでクラミドモナスを殺すこと無く鞭毛を脱毛し、脱毛した鞭毛を回収後、脱毛したクラミドモナスをさらに培養し、鞭毛を再生させ、再度鞭毛を得る方法について検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、人工筋肉の安定性・収縮力向上を目的とした分子モータの改良を行う。さらに鞭毛の調達方法の自動化装置を開発する。複数回鞭毛を回収させるためにpH法を検討する。低pHにすると鞭毛が脱毛することが知られているが、長時間(数分間)低pHに暴露するとクラミドモナスが失活してしまうことが知られている。そこでファーメンタの機能を用いて短時間だけpHを低くし、指定の時間で自動で中和作業するプロセスを構築する。この精製した鞭毛を用いて振動する人工筋肉の試作に取り組む。まず、これまで用いていた人工筋肉の微小管の代わりに精製・脱膜した鞭毛を利用する。鞭毛・微小管の比率や鞭毛の長さ等を調整することにより振動の最適化条件を探る。さらに、コンピュータシミュレーションによりその最適化条件を予測する。
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Research Products
(2 results)