2018 Fiscal Year Annual Research Report
制御ー計測ー情報の高度融合による組織形成場におけるダイナミクス解析
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18H01413
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
萩原 将也 大阪府立大学, 研究推進機構, 講師 (00705056)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞環境制御 / 細胞集団行動 / マクロピノサイトーシス / 微細加工技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では従来直接計測が困難であった細胞行動および集団形成に影響を及ぼす場に働くダイナミクスを,制御・計測・情報技術を高度に融合することにより解析することを目的としている。本年度は微細加工技術を用いて細胞周りの微小空間を制御することで細胞行動の再現性を飛躍的に高め、長期間に渡る数百の細胞行動データを取得することを達成した。具体的には、気管支上皮細胞集団を三角形に配置してから培養を行うと、一旦全ての細胞が三角形の稜線付近に集約されたのちに、再び三角形を再構築するように個々の細胞が移動するという秩序だった行動が確認された。また、三角形以外にも細胞の初期集団の形状を変化させると、異なる集団行動が確認できた。このように細胞周りの微小環境を制御することにより、細胞集団行動の再現性を高め、細胞が従っている秩序を際立たせることができるため、細胞行動メカニズムを明らかにする上で大きく貢献が可能である。 さらにこれら膨大な量の行動データについて、特徴量を抽出することにより意味のある情報へと変換することが出来た。数理モデルについては、細胞間の接着に起因する力学相互作用に加え、細胞が分泌する分子による化学相互作用、細胞外マトリックスによる外力を考慮した数理モデルの構築を行った。 また、本研究課題で対象としている気管支上皮細胞の行動には、周囲に存在するEGFにより刺激されたマクロピノサイトーシスが大きく寄与していることを実験・理論の両面から明らかにし、上記化学相互作用に必要な一部の分子を同定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は1)細胞周りの微小空間を制御することで細胞行動の再現性を飛躍的に高め,2)上記制御により高いSN比を持つ膨大な量の細胞行動データを画像処理と特長量抽出により自動計測・判別し,3)取得した膨大なデータを仮説した数理モデルにデータ同化させパラメータを最適化することにより,組織形成における場のダイナミクスを解析するという,全く新しい手法を確立しようとするものであり,本年度は膨大な量の細胞行動データの取得を達成した。また数理モデルについても力学相互作用、化学相互作用を加味したモデルの構築を達成していることから、当初計画どおりの進捗状況である。 さらに当初の研究課題を超えて、数理モデル内で仮定している化学相互作用に必要な分子の同定についても達成することができたため、当初の計画以上の成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた膨大な量の細胞行動データについて、機械学習も用いて情報の特徴を際立たせ、定量化を行うことにより、実験データと仮説した数理モデルの比較・検証を行う。実験とモデルの特徴量データの差が最小になるよう、モデル内のパラメータ値について最適化を行い、複数の条件下でモデルが正しいかどうかの検証を実施する。仮にモデルが実験結果と不整合が生じた場合は、仮説したモデル内に不足した現象があると捉え、モデルの再検討を繰返し実施することで、モデルの有用性を明らかにしていく。
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