2018 Fiscal Year Annual Research Report
Real haptics system without any sensors at slave side
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18H01433
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
大西 公平 慶應義塾大学, グローバルリサーチインスティテュート(三田), 特任教授 (80137984)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ハプティクス / センサレス |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、モーションコントロールやメカトロニクスにおいてエンコーダなどの位置検出器やストレインゲージを用いたトルクセンサなどの力(トルク)検出器なしに位置制御あるいは力制御を行うことは劣環境における作業に欠かせない。さらに、深海中、真空内、高放射線下などの過酷な作業現場では力触覚を伝送しバイラテラル制御を行うことが求められている。平成30年度の研究においては現在最も多用されているブラシレスDCモータに対して位置や力の検出器を用いない力覚伝送技術の基盤を確立することに成功した。具体的にはブラシレスDCモータ内の永久磁石型回転子の磁束の時間変動を検出し、これを電子的にAB信号に変換し通常のエンコーダ信号に該当するパルスを発生させる技術を確立した。 つまり、ブラシレスDCモータからのホール信号をパルス整形してAB信号を発生させる技術を確立したのでありその分解能は1.5P/R程度(4逓倍で6P/R)の低精度になる。しかし、外乱オブザーバを付加することで通常のエンコーダによる制御と比較して、遜色ない制御性を得ることができる。具体的なブラシレスDCモータを使って実験したところ、256P/Rのエンコーダを実装した場合に比べて、定常状態では位置制御、力制御ともに誤差はなく、過渡状態では位置制御における瞬時最大誤差が1.5倍程度、トルク制御における瞬時最大誤差が1.2倍程度になり通常の使用法では問題ない性能を得ることに成功した。さらに力触覚伝送という、速度誤差およびトルク誤差がともに小さくなければ精確な力触覚が得られないようなシステムにおいてもエンコーダの有無に殆ど差が無いことを実験で明らかにした。 このようにエンコーダやトルクセンサがなくてもブラシレスDCモータでは、センサがあるのとほぼ同等の性能を得た。また、これを一軸の力触覚伝送システムに適用して良好な性能を得ることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度においては産業界で使われている最も代表的なモータであるブラシレスDCモータを対象として、外付けの検出器が一切無い速度-力制御を可能にするシステム開発を行った。これまでの研究からロバストなモーションコントロールは結果的には完全加速度制御系と等価であることがわかっている。アクチュエータに求められる速度制御(あるいは位置制御)と力制御は双対の関係にあり、モーションコントロールに求められる機能はこれら二つの制御の組み合わせ(=一般化座標変換)で実現できる。従って、外付けの検出器がない場合に等価的な加速度制御系を実現できれば必要な機能を実現できることになる。 平成30年度においてはブラシレスDCモータのホール信号を用いることで超低精度エンコーダと等価な信号を得ることに成功し、これに外乱オブザーバを併用することで性能劣化を最小限に食い止めることに成功した。この方法は電動機のモデルに依らないので、電機子抵抗変化やインダクタンス変動にロバストである。これ以上の性能を得るにはモデル依存にならざるを得ない。実際にはDCリンクに流れるq軸電流とブラシレスDCモータのモデルを用いた加速度推定を行うことで性能改善がどれ程なされるかという比較評価を今後予定しており、今年度と来年度の二年間で明らかにしていく。 平成30年度は基盤技術の開発に集中し、外付けセンサの一切無い場合でも低精度エンコーダを装着したばあいと同等の性能が得られ、さらに外乱オブザーバの併用で実用上問題ない程度まで性能向上を行えることを明らかにすることができた。これは当初の計画を上回るペースであり、現在この実験結果を中心にした論文を学会誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度(令和元年度)では、昨年度に引き続きセンサレスでリアルハプティクスを実現するための残された理論の整備と翌年度に向けたいくつかの実験を行う。 これまで達成したスレーブ側のセンサレス制御は一軸運動である。力触覚は畢竟接触対象物のインピーダンスを感じる能力に他ならないため、周波数領域における(スレーブ側で発生する)力と速度の比により表わされる。マスターからスレーブに伝達される力信号がτ1遅れ、次にスレーブからマスターに伝達される速度信号がτ2遅れると、オペレータが感じるインピーダンスは本来感じるべき時間よりτ1+τ2遅れた力信号と本来感じるべき時間よりτ2遅れた速度信号の周波数領域の比となってしまう。この場合は力と速度はともに位置と時間からインプリシットに計算され、その遅れは上述のような計算となるが、これは位置読み取り信号のみにより力と速度を同時に計算することを前提としている。もし力と速度を別々のセンサから推定計算すると、上記の遅れのみならず、それぞれの遅れ時間の差もインピーダンスの誤差に影響する。したがって、スレーブ側にセンサを持たない場合は推定する力と速度がどれだけ遅れるかということをあらかじめ制御系に織り込んでおかないと正しい力触覚(=対象のインピーダンス)が再現されないことになる。 今後スレーブ側にセンサを持たない多自由度におけるリアルハプティクスシステムについて軸ごとの遅れ時間を考慮に入れた制御系を設計し、これを多自由度系実システムで検証する予定である。また、遅れによるインピーダンスの再現性に関する指標を定義し、この指標で制御性能が評価できるかどうかを併せて検証する。実験装置は昨年度に製作した実験装置に改良を加えた多自由度の把持システムにより行う予定である
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Research Products
(3 results)