2021 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of secure communication theory needed for advanced IoT society based on multi-terminal information theory and cryptographic theory
Project/Area Number |
18H01438
|
Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
大濱 靖匡 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (20243892)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SANTOSO BAGUS 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (40571956)
八木 秀樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (60409737)
渡辺 峻 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70546910)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 分散符号化 / 安全通信維持 / 情報漏えい / 多端子仮説検定 / 情報幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究実績として次の2つの主要結果を得た. 1. Slepian-Wolf型分散符号化の枠組みでの相関のある鍵を利用した共通鍵暗号方式について議論した.情報漏えいの尺度として,通常は相互情報量(Mutual Information (MI))を用いる.この研究では,相互情報量に代わる新しい情報漏えいの尺度を導入した.これを変形(Modified)相互情報量(MMI)と呼んだ.MMIは,MI以上の値をとるので,安全性をより厳しく評価する尺度になっている.MIがゼロのときは,必ずMMIがゼロとなることから,MMIは情報漏洩の尺度としての妥当性を有する.本研究では,MMIの尺度の下で,安全通信のための必要十分条件を与えた.2.多端子分散符号化の枠組みで仮説検定を行なう問題を考察した.この問題に関して,2019年に,仮説検定における検出力指数の上界を陽に得えることに成功したが,圧縮器の圧縮レートがゼロに収束するときの解析が不十分であった.特に,圧縮レートがゼロに収束するときの検出力指数が従来知られている最適なゼロレート指数に一致するかどうかが不明であった.本研究では,2018,19年度の研究で得られた上界とは異なる上界を得た.この上界について,圧縮レートがゼロに収束するときの解析を行った結果,ゼロレートの極限において,従来しられている最適指数が得られることが判明した.この結果の導出では,情報スペクトル理論,タイプ理論,情報幾何学の3つの組み合わせが必要になる.特に情報幾何学の逆定理の証明への適用は,本研究が初めてである. この他の研究として,放送型共通鍵暗号方式において前年度にリードソロモン符号を用いた符号法が提案され,これについて更に考察された.特に暗号化前と後という2つの方式の提案とその関係が議論された.また具体例に対する符号設計について厳密解析がなされた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は, Slepian-Wolf型分散符号化の枠組みにおいて、相関のある鍵を利用した共通鍵暗号方式について,重要な進展が見られた.これまで,安全通信維持のための十分条件しか得られていなかったが,この研究で,安全通信の必要十分条件を得ることができた. 多端子仮説検定については,世界で初めて,有限レートの通信制約が有る場合の検出力 指数の上界として,ゼロレート圧縮のときの最適指数を再現できる結果を得た.この結果は,40年間の未解決問題についての解決に向けて,大きな前進があったことを意味する. 放送型共通鍵暗号方式に関しては,前年度からの符号設計の研究において,さらなる進展があった.具体的にはリードソロモン符号を用いた2つの符号化法の提案がなされ,それらの関係が明らかになった.また,符号設計の研究において,具体例についての厳密な解析がなされた. 本年度は,理論応用両面における研究の進展があった.特に理論面では,多端子符号化の枠組みにおける統計的推論において,著しい進展があった.以上のことから本年度は総合的に見て,当初の計画以上に進展しているという結論になった.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針としては,理論,応用の両方の研究を推進し,全体としての当初の目標を超える達成度を実現することを目標とする.応用面についても,より一般的な攻撃モデルへの議論の拡張が重要である.情報漏えい量の具体的な公式を得たが,これより、情報漏えい量を具体的に計算するには,情報漏えい量の公式から情報漏えい量を効率的に計算するためのアルゴリズムが必要な状況にある.以上を踏まえ,理論,応用それぞれにつき,研究推進の具体的方策を以下のように提示する. 理論面:まず,共通鍵暗号に関するハードウエア攻撃下での安全通信維持の問題として,安全通真維持のための必要十分条件の考察の研究を推進する.本年度の研究で,MMIという情報漏えいの尺度を導入することで,安全通信維持の必要十分条件を得ることができた.このことは,情報漏えいの尺度の取り方と安全通信維持の条件との密接な関係を示唆している.応用面:昨年の符号設計の研究を更に発展させる.具体的には,リードソロモン符号を用いた場合の情報漏えい量について更に解析を行ない,理論的な研究により得られた安全通信の限界にどれくらい迫れるかを具体的例に対して考察していきたい.この場合は符号の有限長解析の問題を扱うことになる.
|