2018 Fiscal Year Annual Research Report
ランダム行列理論を応用したレートレス符号化変調方式の創出
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18H01441
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
竹内 啓悟 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30549697)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 情報通信工学 / 情報理論 / ランダム行列理論 / 符号化変調 / 近似的メッセージ伝播法 / 期待値伝播法 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の無線通信では、通信路の環境に応じて符号化や変調方式を切り替える適応変調によって、伝送レートの調節を行っている。しかし、適応変調には、(i)符号化や変調方式の切り替え基準の設計は容易でない、(ii)切り替え失敗時に伝送レートの損失が大きい、という欠点がある。これらの適応変調の欠点を克服するレートレス伝送方式として、スパース重ね合わせ符号の研究を行った。 スパース重ね合わせ符号では、辞書行列の設計が重要となる。現状で提案されている辞書行列は、辞書を独立なガウス乱数を使って構成するため、情報理論的な性能は優れているものの、辞書をメモリ上に保存することさえ困難で、実装は到底不可能であるという問題点がある。そのため、ランダムな辞書の構成と比較して性能劣化を最小限に抑制した上で、実装に適した代数構造を辞書に導入する必要がある。 本年度は、スパース重ね合わせ符号の辞書行列として、標準ガウス行列、ハール直交行列、アダマール変換にランダムな置換を施した行列の三つを検討した。最初の二つがランダムな構成に対応し、最後の辞書行列は実装に適した代数構造を有する。近似的メッセージ伝播法(AMP)及び期待値伝播法(EP)に基づく反復推定法の性能評価を行った結果、AMPは標準ガウス行列を使用した場合のみ収束するという当初の予想に反して、いずれの行列を使用した場合にもAMPはEPとほぼ同等な性能を達成できることを数値実験により確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の想定よりも進捗がやや遅れた原因として、標準ガウス行列の場合以外にも、AMPはEPとほぼ同等な性能を達成できるという予想外の結果が得られた点が挙げられる。そのため、当初の計画ではAMPに見切りをつけてEPに研究を進める予定であったが、AMPをより深く研究する必要性が生じた。 ただし、EPよりもAMPの方がレートレス化に適した復号法であるため、当初はEPに対して実施する予定であった内容をAMPに置き換えて実施することで、スパース重ね合わせ符号によるレートレス符号化変調方式を構築するという最終目的の達成には、大きな影響を与えないものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
EPに注目して研究を進めていく当初の方針を変更して、AMPに注目して研究を進める。特に、AMPの収束性に関する深い理解を得ることを目指す。現時点では、標準ガウス行列を使用した場合にAMPの収束性が保証されるという十分条件のみが知られている。平成30年度に得られた数値実験の結果からすると、これよりも緩い条件の下でもAMPの収束性を理論的に保障できる可能性がある。そこで、辞書行列をハール直交不変な行列に拡張してAMPの収束性の解析を行うことを目指す。ハール直交不変な行列は標準ガウス行列を含むより広いクラスの行列を表現できるという利点がある。
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Research Products
(5 results)