2019 Fiscal Year Annual Research Report
Establishing evaluation platform for contrast agent of functional photo-acoustic diagnosis
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18H01449
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中村 健太郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (20242315)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 超音波 / 光超音波 / 光音響 / レーザ / 半導体レーザ / 造影剤 / イメージング / 変調光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、医用超音波技術のひとつである光超音波イメージングにおいて今後の利用が期待される造影剤について、それを評価する装置の開発を行う。この造影剤感度評価装置では、振幅変調した連続光を用いることで低い尖頭光パワーで評価を安定に行うことをめざし、半導体レーザ光源と音響共鳴を利用した高感度検出系から構成している。前年度は変調周波数が数kHzの連続低出力光による評価装置について主に検討したが、今年度は本手法による評価結果をパルス光の場合にも適用できることを確認するため、パルス光とMHz帯超音波トランスデューサによる評価装置を検討した。 人体模擬ファントムに、血管を想定した直径1 mm以下のガラスキャピラリを埋め込み、その中に造影剤を想定した液体として黒インクを充填した。この試料に光パルス照射を行い超音波トランスデューサで受信する評価装置を組み立てた。650 nm帯半導体レーザによるパルス光を用い、光源パルス幅を可変として、パルス幅とキャピラリ直径、発生した光音響信号の強度の関係を実験的に調べた。また、キャピラリ内の液体の音場の解析解から直径方向の音場の共振とパルス幅との関係を考察した。さらに、試料液体とキャピラリをモデル化した有限要素法振動解析も行って、振動の励振状況やキャピラリ軸方向への波動伝搬のようすをシミュレーションした。その結果、キャピラリに閉じ込められた液体の直径方向共振に合った光パルス幅で光音響信号の発生効率が高いことが確かめられた。また、より精密には、試料液体の音場モードはキャピラリの振動と結合しており、これらを総合した結果により最適なパルス幅が決まることがわかった。以上により、造影剤が充填された管状構造体の光音響応答に関する機構の理解が行えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最終目的である「光超音波イメージング用造影剤の評価装置の実現」に対して、想定される光超音波診断装置の観測周波数に近い数 MHz~10 MHzにおいて実験を行う装置を設計・試作し、それが正常に動作することを確認できた。これにより、昨年までに試作した連続光を用いた造影剤評価装置による評価結果と実際に用いられているパルス光による感度との比較検討を行う準備ができた。 さらに、ガラスキャピラリの直径に適した光パルス幅があることを実験的に示すことができた。また、キャピラリ内の音場の共振がこの性質を支配することを計算との比較で確かめることができた。キャピラリ自体の振動とキャピラリ内の音場が結合した挙動を示すことを、より詳しいモデルの数値計算によりシミュレーションすることができた。これらから光音響イメージングにおける重要な物理原理をわかりやすく説明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度では、ガラスキャピラリに替えて粘弾性チューブなどを用いた場合についての検討を進める。硬いガラスキャピラリの利用は、その共振の利用によって、評価装置としての感度を上げる効果があるが、より生体に近い構成でも試験を行う必要があると考えるからである。また、有限要素法による解析をさらに進めて、より精密なモデルによって、光パルス幅と発生する光音響信号との関係を詳しく調べる必要がある。また、その結果を、粘弾性チューブの内径推定や機械特性の推定などに応用する可能性を検討する。 一方、2018年度に開発したkHz帯の評価装置について、検出可能レベルを下げるために、マイクロホンを複数にして差動検出を行うなどの雑音抑制策を検討する。引き続き、音響共鳴筒の共鳴周波数を迅速に見つける手法の開発と自動化を検討する。異種試料、濃度の違う試料を次々に試験するために、試料ターレットの導入など、測定のスループットを向上する構成についても設計を行ってゆく。また、ロックイン検出部について市販の組み込み用ユニットを活用し、装置全体の小型化を行う。これらを総合して、kHz帯評価装置の第2試作機を製作する。一方、波長帯の拡大について継続して検討を進める。これまでの光波長600~800 nmに加えて、第2の生体窓である1300 nm帯への装置の適用を行う。光波長を大きく変更するため、レンズ等の光学部品を全て見直す必要があり、短波長と共用装置とできるか別の装置にするかを判断する。
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