2019 Fiscal Year Annual Research Report
Function enhancement and system simplification of fiber Brillouin optical correlation domain strain/temperature distributed measurement system
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18H01455
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Research Institution | Toyota Technological Institute |
Principal Investigator |
保立 和夫 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60126159)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 計測システム / 光ファイバセンサ / 分布型センシング / スマート材料・構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
光ファイバ中の自然ブリルアン散乱を分布測定して光ファイバに加わる歪分布を得る独自の光ファイバ神経網技術「BOCDR法」で、2つの独自背景光雑音低減法と2つの独自測定レンジ延伸法を統合したシステムを稼働させ、5,280m 光ファイバ長で 3.95cm 分解能での分布測定に成功して、性能指数(両者比) 134,000を達成してきた。一方、システムが複雑化して信号強度や測定速度が制限されていた。そこで本研究では、BOCDR法の構造物健全性診断機能は維持・向上させつつ、システムを簡素化する研究に挑戦している。 背景光雑音低減法である「光位相変調法:PM法」を計算処理のみで実現する簡素化技術を進化させた2018年度の成果を基盤とし、2019年度には測定レンジ延伸手法の「2重光周波数変調法:DM法」も導入したシステムに関して、両手法のパラメータを最適化する研究を推進した。これは、交付申請書中で提示した研究テーマである。分布測定機能を発現する為の光源への光周波数変調を互いに整数倍の関係にある2周波数で行い、空間分解能を高く保ちつつ測定レンジを延伸するのがDM法である。このとき増加する背景光雑音が計算PM法によって低減できることを、シミュレーションと実験により実証することに成功した。 2019年度には、この他、BOCDR法のシステム出力スペクトラムの表現式を導出することにも成功し、誘導散乱による兄弟技術であるBOCDA法の表現式と完全に一致することを見出した(現在、英文論文採択済み)。背景光雑音低減法の「光強度変調法:IM法」が光源FM波形を整形することで簡素化できることを、BOCDAシステムにおいて提案・実証することにも成功した。兄弟技術に共通する独自の分布測定原理「光波コヒーレンス関数の合成法」においても、分布測定に際して現れる雑音を低減する簡素化技術を提案・実証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の交付申請書に記載のテーマは、「計算PM法によって簡素化されたシステムに独自の測定レンジ延伸手法である二重光周波数変調法(DM法)を付加し、背景光雑音を低減しつつ測定レンジを延伸した新システム構成に関する研究を展開する」ことであった。本報告書の6項に記載のとおり、上記テーマにて成果を挙げている。両手法を含むBOCDRシステムのシミュレーション手法と実験系を構築し、DM法により測定レンジを延伸した状態で、BOCDR法の背景光雑音とDM法が増加させた雑音成分の両方が計算PM法で低減できることを実証している。 BOCDR法の性能向上手法である2背景光雑音低減法と2測定レンジ延伸法を統合したシステムで、その簡素化を実現することが本研究の目的である。各手法を簡素化すると同時に、他手法と組み合わせた際に互いのパラメータを調整して性能を維持・向上させる。背景光雑音低減法の「光強度変調法:IM法」では、光源へのFM変調に同期した適当な波形で光源強度も変調することで時間平均パワースペクトラムを整形し、背景光雑音を低減してきた。その為には光強度変調器を付加する必要があった。これに対し当グループでは、光源へのFM波形を工夫するだけで、光強度変調器なしで、時間平均光源パワースペクトラムを最適化できる手法を創案した。本簡素化技術は、既に、BOCDAシステムにおいて実証されている。一方で、6項に記載したように、本研究において、BOCDR法とBOCDA法の出力スペクトラムの記述式が完全に一致することを証明した。これは、BOCDAシステムで実証された簡素化光強度変調法がBOCDRシステムにも実装できることを示している。両技術の基盤である「光波コヒーレンス関数の合成法」に関しても、その出力雑音を低減する簡素化技術を提案・実証できている。 このように、本研究は、順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2つの背景光雑音低減法と2つの測定レンジ延伸法を実装したBOCDRシステムにて、簡素化と性能の維持・向上とを両立させる為に必要な、精緻な検討が本研究の目的である。簡素化技術としては、2つの背景光雑音低減法で提案と実証ができている。「PM法」については、系にPM変調器を導入せず、基本BOCDRシステムの出力にフィルタ計算を施すだけで雑音低減を図る「計算PM法」が提案・実証され、本研究では測定レンジ延伸法の「DM法」との統合システムで研究成果を蓄積した。「IM法」では、光強度変調器を用いず、光源FM波形を整形するだけで雑音低減を可能とする「簡素化IM法(整形FM法)」が、当研究室にて、BOCDAシステムをベースに提案・実証されている。 これらの実績を考慮して、今後の研究推進策を以下のように計画した。「計算PM法」と測定レンジ延伸法の「DM法」との組み合わせは、昨年度に研究した。「計算PM法」ともう一つの測定レンジ延伸法の「テンポラルゲート法:TG法」の組み合わせは、TG法が付加雑音を生じないため、本研究では精査しない方針である。「簡素化IM法」については、「TG法」および「DM法」との組み合わせの精査が必要である。一方で、本研究での成果として、BOCDR法とBOCDA法は同一の理論式で記述できることが証明された。そこで、「簡素化IM法」と「TG法」の組み合わせは、BOCDAシステムにて研究する。一方、「簡素化IM法」と「DM法」の精査研究は、BOCDRシステムで実施する。これで、2つの組み合わせの研究が並走できることとなる。分布計測技術の基盤である「光波コヒーレンス関数の合成法」での雑音低減の研究も続行する。 本研究の最終年度である2020年度には、上記の各サブテーマでの研究成果を統合して、簡素化された分布計測システムを稼働させ、分布計測性能の評価を行う計画である。
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Research Products
(6 results)