2020 Fiscal Year Annual Research Report
超高性能超伝導線材開発に向けたポスト人工ピン技術の創生
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18H01478
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
堀出 朋哉 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70638858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石丸 学 九州工業大学, 大学院工学研究院, 教授 (00264086)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノロッド / 磁束ピンニング / 薄膜 / 超伝導 / ダブルペロブスカイト |
Outline of Annual Research Achievements |
ダブルペロブスカイトBa2ReNbO6を用いたナノロッドに着目し研究を進めた。第一原理計算を行ったところ、原子のサイトごとの熱力学的安定性がRe選択により変化することが明らかになり、Re選択によりRe原子の存在サイトが異なる可能性が示唆された。 今回はReがナノロッド形成および特性へ及ぼす影響を実験的に調べるために、YBa2Cu3O7にBa2LuNbO6およびBa2YbNbO6を添加してナノコンポジット膜を作製した。Ba2LuNbO6およびBa2YbNbO6どちらのダブルペロブスカイト酸化物を導入した場合でもナノロッドが作製できることが、透過電子顕微鏡観察により明らかになった。またナノ粒子も同時に生成することが分かった。10vol%程度の添加までJcを向上させられることを確認し、Re選択によってJc値が異なることも明らかになった。さらにナノ粒子の効果により、ナノロッドに垂直方向にJcを印加した場合でもJcを向上することができた。 また成膜周波数を変化させて構造制御を試みた。YBa2Cu3O7+Ba2LuNbO6膜を高周波数(高成膜レート)で作製したところ積層欠陥が形成された。しかしYBa2Cu3O7+Ba2YbNbO6を高周波数(高成膜レート)で作製すると高磁場の臨界電流密度が大きくなっており、積層欠陥の形成よりもむしろマトリックスのピンニング特性が変化する可能性があることを示している。このようにダブルペロブスカイト酸化物を導入してYBCOナノコンポジット膜を作製する場合には、Re選択が重要であることを実験的に示すことができ、さらに周波数も重要なパラメータであることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ba2LuNbO6やBa2YbNbO6を用いて新しいナノロッドを作製することができ、新しいナノロッド材料の可能性を示すことができた。作製条件によりReの分布が変化することを高分解能電子顕微鏡観察から明らかにすることができ、Reに着目したマトリックスや界面の原子スケールの構造制御の可能性を示すことができた。さらにこれまで条件として固定していた周波数を変化させることでReの分布を大きく変化できる可能性があることを明らかにした。これは今後のナノコンポジット構造制御の幅を広げるうえで大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では周波数を固定していたが、YBa2Cu3O7+Ba2ReNbO6では周波数も重要なパラメータとして薄膜作製を行う必要がある。Re選択により構造を制御することが必要である。ターゲット作製には最適化が必要であり、すべてのReに対して実験的に薄膜作製及びピンニング特性評価を行うのは効率的とは言えない。第一原理計算によりナノロッド、マトリックス、ナノ粒子の安定性を予測したうえで、添加材料を選択する必要があり、2020年度の計算結果の解析および詳細な計算を進めていく必要がある。またIBAD基板用上にYBa2Cu3O7ナノコンポジット膜を作製するためにバッファー層を作製することにも着手している。今後基板をIBAD基板にシフトさせ、実用的観点からピンニング特性向上を実証していく必要がある。
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Research Products
(2 results)