2018 Fiscal Year Annual Research Report
レドックス型固体電離箱の探求と無給電ワイヤレス放射線センサーへの応用
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18H01480
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
中岡 俊裕 上智大学, 理工学部, 教授 (20345143)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 放射線センサー / カルコゲナイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、様々な構造におけるAg-GeTe,GeSbTeの相互作用を探求し,次に,放射線センサーを試作,放射線(γ線)照射を実施した。その結果,想定以上に興味深い物理を含むことを見出した。学術上の進展が期待できるだけなく,センサーの性能向上も期待される。具体的には,期待通りの抵抗変化に加え,この抵抗変化をもたらす導電性領域が予想したように一様に広がるのではなく,縞状の領域を形成することがあることがわかった。また,組成を変えていくと,導電性領域形成が複雑な挙動を示すことがわかった。さらに,Ag拡散に伴いAg2Teナノ構造が形成されること,放射線照射以前から存在するready-madeイオンが存在すること,その定量化などの結果を得た。ready-made Agイオンおよび電圧印加,ガンマ線照射にともないレドックス反応により生成されるAgイオンが,電子,正孔生成に伴う内蔵電場の影響を受け,移動することが主要メカニズムと示唆する結果を得た。今後この検証を勧めていく。 放射線センサの有望性実証として,様々な素子においてガンマ線照射下の抵抗変化をin-situにて測定した。電極としてAgおよびPtでカバーしたAg/Ptを用い,カルコゲナイド材料としてamorphousのGeTe, Ge2Sb2Te5, Ge2,Sb2.5Te5を用いた。構造はシンプルな横型の電極対および櫛歯状の電極を作成した。材料および素子構造を変えることで10GΩ~10kΩと幅広い抵抗をもつ素子が作成でき,最も安定な素子では4%程度の可逆な抵抗変化を得た。ON/OFFの時定数は秒~数分のオーダーであった。本材料系において初めてリアルタイムセンシングを実証したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、メカニズム解明として,Agと本材料系GeTe,GeSbTeとの相互作用を探求し,想定以上に興味深い物理を含むことを見出した。学術上の進展が期待できるだけなく,センサーの性能向上にも解明が必須であるためこの探求を進めた。具体的には,Ag拡散に伴う新規なAg2Teナノ構造の形成,放射線照射以前から存在するready-madeイオンの観測,定量化などの当初の予定以上の成果を得た。 放射線センサーの評価として高速掃引時でも100pA程度以下のノイズを達成し,高速応答測定に耐えるγ線照射下におけるリモート測定系を確立した。これを用いて,10kΩから10GΩという幅広い抵抗値をもつ素子の評価を行い,現在までに4%程度の可逆な抵抗変化を得ている。素子形状を工夫することでさらなる向上が可能であると考えている。 本センサーを無線で読み出すためにSAWを用いたIDタグ方式では。LiNbO3基板において周波数100MHz(櫛歯の幅:8.72μm),600MHz(同1.45μm)にて素子を試作した。基礎特性を評価している。平行して,既存アンテナを用いた原理実証の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
メカニズム解明として,特に,初年度見出したイオンのセンサーへの影響について調べる。具体的には初年度の知見を踏まえて,素子構造依存性を調べ,in-situでのcyclic voltammetryを実施する。委託分析結果とあわせ,メカニズム解明が可能になると考えている。また,この素子構造依存性から,センサー向けの最適化構造を見出し,これを作成する。 並行して,無線部との融合に取り組む。SAWを用いたIDタグ方式と並行して,2,4GHz,5.8GHzと現行の無線LAN帯と同じ既存アンテナを用いた原理実証をすすめる予定である。
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