2018 Fiscal Year Annual Research Report
Highly-sensitive vector magnetic field sensor using multi-frequency quantum manipulation of electric spins in diamond
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18H01502
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
早瀬 潤子 (伊師潤子) 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (50342746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 幸志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50392684)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量子計測 / ダイヤモンド / NV中心 / 磁場センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ダイヤモンド窒素-空孔(NV)中心を対象として、多周波数マイクロ波(MW)によって複数の電子スピン量子状態を独立かつ同時に制御する、“多周波数制御ベクトル磁場センシング”技術を提案し、実験的に実証することである。本手法を用いることで、単一周波数MWを用いた従来手法の問題点を解決し、MWによって高感度方向が自在に制御可能な高感度ベクトル磁場センサの実現を目指す。本研究の目的達成のために、以下に示す2つの項目について研究を進めた。 A)ランダム配向・高密度・長コヒーレンス時間を有するサンプル作製・評価 本研究では提案手法の実現のために、窒素ドープCVD成長、イオン注入、アニーリングを組み合わせることで、ランダム配向かつ高密度・長コヒーレンス時間を有するNV集合体サンプルの作製を目指す。作製プロセスの検討を進め、ランダム配向を有するサンプル作製には、窒素ドープCVD成長・Heイオン注入後に高温アニーリング(1200℃)を施すことが有効であることを見出した。各作製条件の最適化を進め、配向率がほぼ25%に等分配されたNV集合体サンプルの作製に成功した。 B)多周波数MW回路を組み込んだ光検出磁気共鳴顕微鏡の開発 本手法では、4つの異なる周波数のMWを用いて、異なる配向を有する4種類のNV中心を独立かつ同時に制御する。そのために、MWの位相・パルス幅・強度を独立かつ精密に制御可能な多周波数MW回路を構築し、光検出磁気共鳴顕微鏡に組み込んだ。自作の装置・NV中心サンプルを用いて、多周波数数制御ベクトル磁場センシングのデモンストレーションを行ない、従来の単一周波数MWを用いたベクトル磁場センシングと比較して、磁場感度を2倍以上向上させることに成功した。この結果について、国際論文誌Appl. Phys. Lett.2編および国際会議4件(招待講演2件を含む)にて成果発表を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプル作製および装置開発ともに順調に進み、初年度の目標であった“多周波数制御ベクトル磁場センシング”の原理実証を行なうことに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、我々の提案した“多周波数制御ベクトル磁場センシング”技術の原理実証実験を行なうことに成功した。しかし現在までに、特定方向の磁場に対してのみしか原理実証できていないため、今後はあらゆる方向の磁場に対して同手法による高感度化が可能であることを実証していく。また多点測定によりベクトル磁場の2次元分布測定を進め、その結果から磁場源となる電流分布を求める方法を検討していく。さらに配向率が25%に完全に一致しないNV中心サンプルを用いた場合でも、照射するMWのパルス面積を変えることで補正が可能であることを実験的に実証する。 サンプル作製については、最初の原理実証で得られた磁場感度(350 nT/√Hz)がそれ程高くないため、さらに高い磁場感度を有するNV中心サンプルの作製を目指す。具体的には、窒素ドープCVD成長、イオン注入、アニーリングにおける各作製条件の最適化を進め、さらに高密度・長コヒーレンス時間・ランダム配向を有するNV中心集合体サンプルを作製していく。光検出磁気共鳴顕微鏡については、CCDカメラを導入することで、広視野のベクトル磁場イメージングを得られる装置の開発を進めていく。 さらなる研究項目としては、様々な種類のMWパルスシークエンスに対する多周波数制御の有効性を検討していく。
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Research Products
(17 results)