2019 Fiscal Year Annual Research Report
Highly-sensitive vector magnetic field sensor using multi-frequency quantum manipulation of electric spins in diamond
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18H01502
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
早瀬 潤子 (伊師潤子) 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (50342746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 幸志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50392684)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 量子計測 / ダイヤモンド / NV中心 / 磁場センサ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ダイヤモンド窒素-空孔(NV)中心を対象として、多周波数マイクロ波(MW)によって複数の電子スピン量子状態を独立かつ同時に制御する、“多周波数制御ベクトル磁場センシング”技術を提案し、実験的に実証することである。2019年度は、以下に示す2つの項目について研究を進め、2編の国際論文誌、15件の国際会議(招待講演4件を含む)、10件の国内会議にて成果発表を行なった。 A)ランダム配向・高密度・長コヒーレンス時間を有するサンプル作製・評価 2019年度は、従来行なっていた窒素ドープCVD成長、ヘリウムイオン注入、高温アニーリングを組み合わせる手法に加え、電子線照射を組み合わせる手法を開発した。この結果、従来よりもNV中心の高密度化に成功した。サンプル評価を進めたところ、高密度にも関わらす、比較的長いコヒーレンス時間(> 20 us)を有することがわかった。これにより、センサ感度を決定する密度とコヒーレンス時間の積が、これまでの報告値を超える可能性があることが示された。 B)多周波数MW回路を組み込んだ光検出磁気共鳴顕微鏡の開発と多周波数制御ベクトル磁場センシングのデモンストレーション 多周波数制御ベクトル磁場センシングのために、多周波数MWを印加可能な光検出磁気共鳴顕微鏡の構築・改良を進めた。2018年度には、自作の光検出磁気共鳴顕微鏡を用いて、多周波数制御ベクトル磁場センシングの最初の原理実証には成功していたが、センサ感度が理論値に達していたかった。この要因として、4つの異なる周波数のMWを印加した際に生じるMW強度の減衰にあることがわかった。そこでMW波回路の改良を進め、多周波数MW印加下の減衰を抑え、かつ減衰を補償する方法を開発した。その結果、多周波数MW印加下の信号強度を以前より増強することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプル作製においては、新たな共同研究を開始し、NV中心の高密度化に向けての道筋を得た。センシングデモンストレーションの実験に関しては、MW回路の問題が見つかり, MW回路の改良に時間がかかったため、当初の予定よりも若干の遅れを生じた。しかしながら、改良したMW回路を組み込んだ装置構築が進んでおり、今後新しい装置を用いたセンシングデモンストレーションの実験遂行を加速できると期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定よりMW回路の改良に時間がかかったため、今後は改良したMW回路を組み込んだ光検出磁気共鳴を用いた実験を早急に進めていく。多周波数制御ベクトル磁場センシングにおけるセンシング感度を理論限界まで高め、様々な磁場方向における本手法の有用性と多点測定によるベクトル磁場マッピング測定を進める。さらに配向率が25%に完全に一致しないNV中心サンプルを用いた場合でも、照射するMWのパルス面積を変えることで補正が可能であることを実験的に実証する。また新たに作製した高密度NV中心サンプルを用いた多周波数制御ベクトル磁場センシングのデモンストレーションを行ない、さらなる高感度化を目指す。ただし新型コロナウイルスの影響で実験遂行が難しい場合には、多周波数制御ベクトル磁場センシングを応用した新たな多周波数温度センシング手法の開発と理論解析を進める。
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