2018 Fiscal Year Annual Research Report
Multi-scale poromechanics of structural concrete with the expansion of crystal or amorphous products
Project/Area Number |
18H01507
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 佑弥 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (10726805)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コンクリート / アルカリシリカ反応 / 膨張 / ポロメカニクス / 凍害 / 複合劣化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は結晶/非結晶性物質の生成による膨張・応力が生じる鉄筋コンクリート構造物一般について,ひび割れ進展リスクと構造性能変化を評価する計算スキームを構築することを目的としている.当該年度はひび割れ中に存在するASR(アルカリシリカ反応)ゲルの経時的な物性変化とマクロな挙動との関連性について明らかにした.材令の異なるASR膨張試験体の力学性能試験により,膨張量以外にも力学性能を規定する支配的な要因があることを示すとともに,試験体内部に生じているASRゲルの微視的な化学組成と力学特性のSEM-EDS,ナノインデンテーションの測定を行うことで,ASRゲル自体の力学特性が大きく変化していることを示した. また,ASRによる膨張モデルの実規模-実環境下での適用性に関する検証を日本大学による実規模試験体の長期間計測結果を用いて行った.低温環境でASR膨張が停滞するモデルを新たに導入することで,自由膨張試験体の長期膨張挙動を良好に追跡できることを示した.一方,鉄筋や鋼桁による強い拘束がある条件で,体積膨張率が小さくなる現象を現状十分にモデル化出来ていないことが明らかとなった. ASR-凍害の複合劣化試験を実施し,複合劣化環境下での力学性能の変化について明らかにした.凍害による膨張はASR膨張速度にはあまり影響しないこと.凍害による損傷が,ASRゲルがひび割れに浸透することで一時的に回復する可能性があることなどを,体系的な複合劣化試験より結論づけた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り,ASRや凍害による膨張損傷が生じたコンクリート試験体について,SEM-EDSやナノインデンテーション,CTなどによる微視的観察と円柱試験体の圧縮強度試験による巨視的挙動計測を組み合わせた実験的検討を行った.ミクロな材料損傷とマクロな力学挙動の関連性を示した.この際,材齢の異なる複数の試験体を用いることで,ひび割れ中に存在しているASRゲルの力学特性が大きく変化していることが明らかとなった.当初はこのようなゲルの引張特性の変化に着目したモデル化を予定していたが,計測された力学特性を反映させたモデルの感度解析により,引張特性よりもむしろ圧縮時の挙動やせん断特性が重要であることが,明らかとなった.また,モデルの長期挙動検証も日本大学による実規模実験を用いて行った.以上より,実施を計画した内容をおおむね遂行しており,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,時間依存の生成物物性変化を考慮可能なポロメカニクスモデルへの構築を進める.具体的には,時間と共にASR膨張損傷が生じたコンクリートの力学挙動を良好に追跡できるよう,ひび割れ開閉時,せん断挙動時のひび割れ中物質の応力伝達機構のモデル修正を行う.また,実規模-実環境下への適用性を向上させるため,反応の温度-湿度依存性について丁寧に検証すると共に,強い拘束条件下で体積膨張率が低減する現象について,低減程度を定量的に明らかにし,モデルへ実装する. また,ポロメカニクスモデルの膨張材挙動への拡張を行う.膨張材の化学反応挙動に基づいて膨張量をモデル化するとともに,材齢初期で骨格自体の剛性が大きく変化する中での膨張圧生成を記述できるよう,ポロメカニクスの圧力生成モデルを逐次計算型へと修正し,解析システムへ実装する.
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