2019 Fiscal Year Annual Research Report
硫酸劣化を受けるコンクリートの実用的な劣化進行予測手法の構築
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18H01511
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河合 研至 広島大学, 工学研究科, 教授 (90224716)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コンクリート / 硫酸劣化 / 劣化進行予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,硫酸劣化における流れの作用等の影響を実験的に再現し,劣化生成物を剥がすメカニズムを考察して,そのメカニズムに従い,劣化生成物の剥がれの現象をモデル化することにより,実構造物を想定した実用的な硫酸劣化の進行予測手法を構築することを目的とするものである. 特に,硫酸浸漬初期の膨張を伴った剥離に着目した実験的検討を実施した.実験には,研究用ポルトランドセメント,試薬合成したエーライトならびに試薬合成したアルミン酸三カルシウムを使用し,アルミン酸三カルシウムに関しては,二水石膏とのモル比が1:2/3となるよう,あらかじめ二水石膏と混合した.それぞれの粉体を脱イオン水を用いて水粉体比0.50で練り混ぜ,28日間水和させたのち,硬化体を微粉砕して,0.1mol/L硫酸溶液と撹拌を行った.この結果,合成エーライト水和物からはけい素の顕著な溶出が,合成アルミン酸三カルシウムと二水石膏の水和物では,アルミニウムの顕著な溶出が認められ,セメント水和物からは,けい素ならびにアルミニウムの溶出が確認された.しかし,研究用ポルトランドセメントと脱イオン水を用いて水セメント比0.55で作製した硬化体を28日間養生後,0.1mol/L硫酸溶液に浸漬した場合には,アルミニウムの溶出のみが顕著となり,けい素の溶出はほとんど認められなかった.以上の分析結果より,エーライト水和物,アルミン酸三カルシウム・二水石膏水和物について,解析に資する硫酸との反応特性に関するデータを取得できたが,その一方で,セメント硬化体と硫酸との反応では,個々の化合物の反応とは異なる形態となっていることも明らかとなった.水和生成物あるいは反応生成物と細孔構造が関係しているものと思われるが,硬化体と硫酸との反応に伴う化学変化については,既往の研究成果も踏まえて,解析的検討を今後進めていく予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画とは研究内容を変更し,これまでの解析的検討において課題点となっている,セメント硬化体と硫酸溶液との反応における初期の状態変化に注視した実験的検討を中心として研究を実施した.この実験結果より,解析的検討を進めるうえで有益な情報を得ることができたと認識している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究の総括へ向けて,解析的検討を中心として,研究を推進させていく.解析的検討の中で,結合材の相違が硫酸劣化に及ぼす影響,流れ作用が剥離に及ぼす影響,硫酸劣化に伴う膨張から侵食へと移行する条件設定等の部分において,課題点が残っているため,それらを解決するモデル化を進めるとともに,必要に応じ,要素実験的な検討を実施する予定である.
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