2019 Fiscal Year Annual Research Report
地球観測ビッグデータと大規模アンサンブル気候実験による洪水変化の検出と原因特定
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18H01540
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
平林 由希子 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60377588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鼎 信次郎 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (20313108)
山崎 大 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70736040)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 洪水 / 地球温暖化 / 大規模アンサンブル実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
気象庁気象研究所から提供いただいたMRI-AGCMによる大規模アンサンブル実験の河川流出を入力とした河川氾濫シミュレーションを完了した。具体的には、1958年~2013年の機関の長期過去再現実験を10アンサンブル、2010~2013年の4年に対しては過去再現実験および、気候モデルに与える外部強制力から2種類の方法で温暖化成分を除いた自然気候実験の計3実験について、それぞれ100アンサンブルについて河川出力データを河川氾濫モデルCaMa-Floodに入力し、河川流量の計算を全球0.25度で行った。計算年数の合計は1760年(56年×10+3×4年×100)であった。 次に、これら実験データを用いて、2010~2013年の4年間に世界の各地で実際に生起した洪水に対する地球温暖化の寄与を定量化した。具体的には、過去に発生した洪水を災害データベースから取得し、河川氾濫モデルにおける対象河川の位置情報を作成し、その地点における大規模アンサンブル実験について、過去再現実験と自然実験における洪水の発生頻度の差を算定する。洪水の定義は長期過去再現実験から作成した10年確率洪水以上の強度を持つ年最大日流量とした。 その結果、世界の各地において、豪雨による洪水が温暖化の寄与を受けて発生頻度が上がっていること、融雪による春の洪水は温暖化による降雪および積雪量の減少から洪水の発生頻度が下がっている場所と、温暖化により北半球の降水量が増加することで積雪が増加し、洪水の発生頻度が上がっている場所の両方が存在することが見いだされた。 また、観測流量、過去再現シミュレーションによる長期流量、衛星画像による河川氾濫マップから、過去の洪水の増減傾向を検出する手法の開発を行った。その際には、上流の貯水池データを用いて人間活動が洪水のピーク流量に大きい影響を与える地点を事前に検出し、解析をわける作業も自動化することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
様々なデータおよび数値シミュレーションを組みあわせることで、グローバルな過去の洪水の増減傾向の検出を実施した。 大規模アンサンブル気候実験の過去再現実験と、温暖化成分を除いた2種類の非温暖化実験について、2010~2013年の4年間を対象とした100アンサンブルの河川氾濫シミュレーションを完了し、また、10アンサンブルの長期過去再現実験についても河川氾濫シミュレーションを行った。これらの実験データを用いて、2010~2013年に世界で発生した洪水について、イベントアトリビューション解析を行い、過去の洪水の発生頻度に対する過去の地球温暖化の寄与を定量化した。さらに、洪水の発生頻度と地球温暖化との関係について、洪水の原因(豪雨、融雪、モンスーンなど)と地理的な違いなどについて分析を行った。さらに、ブートストラップによるサンプリング手法を用いてアンサンブルの数を1000セットまでランダムに生成してその手法の不確実性を評価した。以上の成果は論文としてとりまとめ、投稿済みである。 以上のようにこれまでにない新しい手法での過去の洪水の増減傾向の分析と、既往洪水の網羅的なイベントアトリビューション解析を実施し、世界で初めてグローバルな地域を対象とした洪水への温暖化の影響の寄与の定量化を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた研究計画の大半について、研究期間の前半である本年度までで概ね成果を出すことに成功し、顕著な研究の進捗を達成することができた。今後、成果を論文としてまとめるために、イベントアトリビューション解析の対象とする過去の洪水イベントをさらに増やすため、解析の対象期間を2010~2013年の4年間から、その15倍の60年に増やすことを行う。具体的には、d4PDF実験を活用し、1951年~2010年の60年間を対象とした100アンサンブルの過去再現実験および非温暖化実験、すなわち60×100×2=12000アンサンブル・年の全球河川・氾濫シミュレーションを行い、より長期間のグローバルなイベントアトリビューション解析を試みる。そのために必要な計算機資源・ハードディスク容量を調達するとともに、過去の災害データベース等から既往洪水の抽出と整備を行う予定である。
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Research Products
(6 results)