2019 Fiscal Year Annual Research Report
Evaluation for severe weather disaster potential using the PV-based TC/ETC bogussing scheme
Project/Area Number |
18H01542
|
Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉野 純 岐阜大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70377688)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 自然災害 / 気象学 / 水工水理学 / 防災 / 高潮 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,全球気候モデルから領域気候モデルによる直接ダウンスケーリングにより,現在気候と将来気候における伊勢湾に接近する最大規模台風の進路アンサンブル実験を実施し,将来気候下の台風は移動速度が低速化(約20km/h)することにより,三重県沿岸部での高潮リスクが現在気候に比べて顕著に増大することを明らかにしている.低速台風の接近により,伊勢湾内には正渦度と負渦度からなる双極子渦が形成され,伊勢湾内の流動が三重県沿岸部付近で収束することにより潮位上昇が生じやすい環境となっていた.理想実験の結果として,伊勢湾内における水深変化と半島(志摩半島)の存在が,伊勢湾内の双極子渦の形成に関与していることも新たに解明している. また,高解像度顕著気象モデルにより温帯低気圧(2014年12月の爆弾低気圧)の進路アンサンブル実験を行っている.また,擬似温暖化実験の手法により,過去気候,現在気候,将来気候の可能最大高潮を評価している.過去気候よりも現在気候で,現在気候よりも将来気候で爆弾低気圧がより強化される傾向にあり,温暖化の進行は爆弾低気圧を強める可能性が示唆された.温暖化気候差分の各成分が将来気候における爆弾低気圧の強化に及ぼす影響を感度実験により評価したところ,特に,下層気温の増加と海水面温度の増加の相乗効果により正のフィードバックが作用して,台風に近い発達メカニズム(CISKやWISHE)により,爆弾低気圧はより強化されることが明らかとなった.温暖化の進行により強化された爆弾低気圧によって,根室における可能最大高潮は約2.5mとなり,2014年12月に観測された爆弾低気圧に伴う高潮(1.42m)に比べて1m近く上昇する可能性が明らかとなった. これらの知見は,北日本地域や太平洋沿岸域における高潮対策の見直しと気候変動適応策の策定に資するものである.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度は,開発された「台風/温帯低気圧ボーガス」や「高解像度顕著気象モデル」を用いることで,現在気候および将来気候における台風や爆弾低気圧の進路アンサンブル実験を順調に実施している.また,甚大な被害をもたらした2019年台風19号に伴う進路アンサンブル実験を行うことで,関東地方や中部地方における可能最大降水量の評価にも成功している.さらには,伊勢湾内における新たな潮位上昇メカニズムを解明しており,当初の計画以上に研究は進展していると評価している.
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は,これまで開発された「台風/温帯低気圧ボーガス」と「高解像度顕著気象モデル」に加えて,SI-CAT気候実験データベースシステムSEALを利用してアンサンブル気候予測データベースd4PDFを入力条件として用いることで,現在気候および過去気候における最悪規模の台風や爆弾低気圧に伴う風速・高潮・降水量の将来変化をより高精度に評価する予定である.
|