2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of nanocarbon-TiO2 composite showing high self-regeneration capacity for water treatment
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18H01566
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
吉村 千洋 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (10402091)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野出 洋文 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 教授 (50165130)
森 伸介 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (80345389)
佐野 大輔 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (80550368)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノカーボン / 光触媒 / 自己再生能力 / 水処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ナノカーボン材料と光触媒を組み合わせることで、自己再生能力の高い複合材料を開発し、維持管理が容易で高効率な新たな水処理技術を提案することを目的としている。本年度は初年度の研究を継続する形で、生成プロセスの確立、吸着機構の詳細の解明、天然有機物との相互作用の解明、そして微生物との相互作用の解明などに取り組んだ。 まず、フェロセン含有軽油からディーゼルエンジンによって合成した鉄・炭素複合粒子を、新たに開発した静電集塵機によって大量に回収することに成功した。また、回収した鉄・炭素複合粒子を用いて有機物の吸着実験を行ったところ、複合粒子の表面から溶存有機分画を除去することで吸着容量が増加するという知見が得られた。 昨年度開発した磁性化ナノカーボン(MCNT)に対して、染料を吸着プローブとして使用した吸着実験を行い、MCNTの最も重要な吸着機構はπ電子スタッキングによる吸着ということが判明した。さらに、低濃度域におけるMCNTの吸着容量は活性炭の容量より高いため、微量の汚染物質の除去に適していることも示された。 そして、下水処理への適用可能性を明確にするために、天然有機物共存下における有機化合物の除去プロセス(吸着、光触媒)の解明も進めた。3種類の天然有機物および複合材料(MCNT-TiO2)を用いた実験から、それらが医薬品の分解課程における各阻害作用(インターフィルター効果、競合吸着、活性酸素捕捉効果)を定量評価した。また、各阻害作用が組み込まれた反応速度モデルを適用することにより、天然有機物存在下では活性酸素捕捉効果が最も重要なメカニズムであることを示した。 また、MCNT-TiO2を用いた大腸菌およびマウスノロウイルスの消毒実験では、磁性光触媒材料によるそれらに対する消毒効果が確認され、大腸菌の除去機構に関して吸着と不活化を区別するモデル式を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ナノカーボン材料と光触媒を組み合わせることで、水処理に活用できる自己再生能力の高い複合材料を開発すること、さらにその表面反応を解明することを狙いとしている。今年度は3年計画で進めている本研究の2年度目となり、低コストのナノカーボン材料の生成プロセスの確立、磁性化ナノカーボンの吸着機構の解明(含モデル化)、天然有機物存在下における微量汚染物質の除去特性、そして、ナノカーボン材料の細菌・ウイルスに対する不活化効果の確認などを進めてきた。 これらの進捗は、ナノカーボンを基盤とする複合材料の表面活性に関する重要な知見となり、実際の水処理環境に近い条件におけるその反応特性についても定量的に評価を行った。その結果、本研究の3年度目に予定している反応条件の最適化や適用可能性の解明につながる知見を得たため、本年度の研究は“おおむね順調に進展している”と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで2年間の成果に基づき、次年度はナノカーボン・二酸化チタン複合材料の簡易生成法の確立とその材料の水処理特性の解明、そして、実際の下水処理水を対象とした性能評価とその最適化を進める。具体的な重点項目は以下の通りであり、その他に金属有機構造体や層状複水酸化物による水処理への応用についても追加的に取り組む。 まず、フェロセン含有軽油からディーゼルエンジンによって合成した鉄・炭素複合粒子の表面から溶存有機分画を除去することで吸着容量が増加するという知見が得られたため、その最適な処理方法を検討する。また、鉄原料であるフェロセンに加えてチタニア原料としてチタンアルコキシドを軽油に加えることで、 二酸化チタン・鉄・炭素複合微粒子の合成を行い、 有機物の吸着・分解性能の評価を行う。 ナノカーボン材料の吸着機構の結果を確認するため、MCNTの表面電荷・表面官能基の分析に継続的に取り組む。具体的には、分析結果に基づいて吸着モデルを立て、そのモデルをベースにし、光触媒の反応モデルを開発し、その上で、既に得られている光触媒の実験データを用いてモデルの検証・最適化を行う。さらに、酸化チタン系以外のナノカーボン・光触媒複合材料を調製し、開発したモデルの適応性を評価する。 また、ナノカーボン・二酸化チタン複合材料に関して、質量分析計による分析を組み合わせることで、医薬品を対象とした吸着・光触媒反応における反応生成物の生成や挙動について解明を試みる。また、並行して、特定の医薬品だけでなく、下水中で一般に確認されている多くの微量有機化合物への適用可能性についても各種モデルを用いた検討を進め、本複合材料の長所・短所を明確にする。 そして、磁性光触媒材料を用いたマウスノロウイルスの消毒実験において、光の照射エネルギーを変化させることで消毒効果が向上する条件を同定する。
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Research Products
(6 results)