2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a passive rate-independent linear damping device effective in displacement control of seismic isolated builings
Project/Area Number |
18H01577
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
五十子 幸樹 東北大学, 災害科学国際研究所, 教授 (20521983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
薛 松濤 東北工業大学, 工学部, 教授 (70236107)
堀 則男 東北工業大学, 工学部, 教授 (60292249)
菅野 秀人 秋田県立大学, システム科学技術学部, 准教授 (20336449)
池永 昌容 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (50552402)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 複素減衰 / 負剛性要素 / 長周期構造物 / 変位制御設計 / 免震構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,免震構造物のような長周期構造物の地震時応答変位抑制に有効な複素減衰の因果的近似モデルについて検討した.負剛性要素とMaxwell要素の並列結合により提案双一次型フィルターが物理的に実現できることを示し,負剛性,バネ,粘性減衰のそれぞれの要素の特性決定法も明らかにした.負剛性要素の物理的実装方法としてSarlis et al. (2013)の提案したプリテンションによるP-Delta効果を用いる場合,負剛性特性の非線形性の影響を検討する必要があることが明らかとなった.そこで,後者の装置の非線形性の影響を実用上無視できるほど小さくするための必要な装置のサイズとプリテンションの大きさを明らかにした.これら検討で得られた成果は,2018年6月に米国・ロサンゼルスで開催された11th National Conference on Earthquake Engineering, 2018年7月に中国・青島で開催された7th World Conference on Structural Control and Monitoring,2018年11月にタイ・バンコクで開催された7th Asia Conference on Earthquake Engineeringにおいてそれぞれ発表した.また,それら成果を更に発展させてまとめたものを国際専門誌であるEngineering Structuresに国際共著論文として投稿し採択されている.負剛性要素とMaxwell要素の並列結合により実装される制御デバイスの有効性検証のための試験体の一部として,オイルダンパーを製作し基本的な特性把握実験を実施した.次年度以降本格的な実験を実施するために不足している治具等の設計を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は,免震構造物のような長周期構造物の地震時応答変位抑制に有効な複素減衰の因果的近似モデルについて検討した.先ず,one-pole one-zeroの双一次型デジタルフィルターについて因果性の検討を行い,数学的に因果性が成立することを確認した.また,負剛性要素とMaxwell要素の並列結合により提案双一次型フィルターが物理的に実現できることを示し,負剛性,バネ,粘性減衰のそれぞれの要素の特性決定法も明らかにした.負剛性要素としてinerter (Smith; 2002)を用いる方法と,Sarlis et al. (2013)の提案したプレテンションによるP-Delta効果を用いる装置の利用を検討した.前者の場合,負剛性効果に振動数依存性があり,特定の振動数では良い結果が得られるものの,振動数がずれると性能が低下する場合があることが分かった.後者の場合は振動数依存性はないものの,負剛性特性の非線形性の影響を検討する必要があることが明らかとなった.そこで,後者の装置の非線形性の影響を実用上無視できるほど小さくするための必要な装置のサイズとプリテンションの大きさを明らかにした.次に,既往研究で提案されている複素減衰の因果的近似モデルであるBiotとMakrisによるモデルと,本研究課題で提案するモデルの関係を調べた.当初一次のフィルターとして考えていた提案フィルターの次数を0~1の値を持つ分数次(fractional order)に拡張すると,BiotとMakrisのモデルは分数次フィルターで表現できる可能性があることが分かってきている.この分数次フィルターのアイディアについては,次年度以降継続して検討し,理論的に整理していく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,BiotとMakrisの提案したモデルと本研究課題で提案する複素減衰の因果的モデル及び物理的実装の方法について,数学的な関係が存在することが分かってきている.今後は,理論を更に深度化させて,非因果的である複素減衰の因果的近似に関する統一モデルと統一理論を構築することを目指す.ここで考えている統一モデル・統一理論とは,既往のBiotモデル,Makrisモデル,双一次型デジタルフィルターを表現する一つのモデルを見いだしてそれぞれの関連性を理論的に明快に示すことである.統一理論構築のための要となるのは,デジタルフィルターの次数であろうことが分かってきているが,まだ思いつきのレベルから脱していない.次年度以降,特にMakrisの研究とその関連研究を更に深く調べ,理論的に整理を進めていく必要がある.理論的検討には,デジタルフィルターの理論に詳しく,双一次型フィルターの提案に大きな貢献をしたメリーランド大学のBrian Phillips准教授の協力も仰ぐ予定である.理論的検討と並行して,複素減衰の因果的近似による長周期構造物の変位制御設計という目標の実現可能性を検証するための振動実験計画を更に推し進める.これまでに,既存試験体を本申請課題に流用するための下準備や,新たに本申請課題のために製作したオイルダンパーの基本特性確認試験までを実施し,不足している治具の設計までが終了しているが,今後,設計した治具を製作し,振動台実験を実施していく予定である.
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Research Products
(16 results)