2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a system for vertical profiling of ocean flows in deep, middle, and shallow layers
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18H01636
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
西 佳樹 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (70470052)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 海洋資源 / 流体構造連成 / データ同化 / 非線形振動 |
Outline of Annual Research Achievements |
海中に鉛直に吊り下げられた細長構造物は通常、海底の掘削、海底から洋上までの資源輸送に供せられる。そのため、海流などの外乱に曝される本構造物が安全に運用できるように、構造物の振動を抑制する意図で設計がなされる。しかしながら、その外乱が表層から深層にいたるまでどのような強さをもっているかについて未知な部分を残したまま設計を行っているのが現状である。本研究はそれとは対照的に、このような細長構造物の振動をある程度許容し、それを計測および予測することで、その外乱を推定することを目指す。2019年度においては、その推定を可能とする数理的手法を創出する作業を進めた。海中という一般的には空間的に密な計測が困難な場所という難点を克服することに邁進した。海中に設置された細長弾性体を対象とした流体構造連成解析手法(2018年度に作成)に、Unscentedカルマンフィルターやスパースモデリングを組み合わせることが有効であることを見出した。Unscentedカルマンフィルターは、(1)非線形系への適用が可能であること、(2)プログラムがシンプルに実装できることを利点と認識し、当初の計画通り、その性能を検証し、センサー種類の選択に依存するが、満足できる推定性能を有することを示すことができた。その一方で、そのセンサーを海中で用いるという条件から、構造物のしんどく計測を検知するためのセンサーを豊富に用いることができないという政策については、追加での検討を必要とした。そこで、2019年度に改めて文献調査を行い、スパースモデリングを応用することで、センサー個数の乏しさを補償できるかもしれないとの考えに至った。これに直交関数展開の考え方を統合することで、上記の制約を受けながらも実用的な振動推定が可能な手法を提案することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度に水中細長構造物の流体構造連成解析法をソフトウェアとして構築作業を完了した。2019年度にデータ同化手法の実装に本格的に取り組んだ。当初計画でUnscentedカルマンフィルター(カルマンフィルターの一種で非線形系にも適用可)の適用を掲げており、その性能は概ね満足できる水準であることを確認できた。2019年度の文献調査においてスパースモデリングの適用を新たに計画に組み込んだ。海中に設置という条件が課されているため空間的に疎になってしまう計測センサーからもたらされるデータ量を補償し得る手法として有効であると推測したからである。スパースモデリングに直交関数展開を統合することで構造物に作用する外力分布を推定する手法を考案しプログラムを実装し計算を実行した。その結果、有望な推定性能を有することを示すことができた。一方、センサーの選択という点で注意を要することも判明した。加速度センサー、変位計、ひずみゲージの3種類を単独あるいは組み合わせで装填した場合の推定性能をそ比較したところ、変位計単独の場合では満足な結果が得られなかったが、他の場合では有望な結果が得られた。結果をとりまとめて論文として投稿する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度までに開発を進めてきた新手法(スパースモデリングと直交関数展開とを統合した手法)の頑健さを向上させることが2020年度の課題である。この課題の遂行をもって本事業は完結する。具体的な検討課題は次の通りである。 第1に、海中で正常に作動できるセンサーを選択しなければならない点が挙げられる。この要請から、加速度センサー単独での使用が望ましい。しかし、これまでの検討から、加速度センサーのみの場合は振動の振幅分布は推定できるものの、位相の推定に関しては問題が残ることが分かっている。このことから今後の方策として次の2つを挙げる。(イ)加速度センサー単独以外の組み合わせが実現可能かを検討する、(ロ)位相はずれているが振幅の推定がある程度他正しく行われていることをもって最終目的を達成できるかどうかを検討する。 第2に、センサー出力および数値計算結果に混入する雑音が推定に与える影響についてである。乱数を用いた計算を十分に行うことで、この影響を定量的に評価する。その結果を統計的にとりまとめて推定精度を示す。
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