2018 Fiscal Year Annual Research Report
再保険ネットワークのリスク管理と保険システムの救済問題に関する研究
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18H01652
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 輝好 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (90360891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 利昌 北海道大学, 経済学研究院, 教授 (30324487)
西出 勝正 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (40410683)
施 建明 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 教授 (70287465)
八木 恭子 首都大学東京, 経営学研究科, 准教授 (80451847) [Withdrawn]
宮田 亮 琉球大学, 国際地域創造学部, 准教授 (30336383)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ファイナンス / システミックリスク / 金融リスク |
Outline of Annual Research Achievements |
(A)2企業間のシステミックリスク問題に関して,内生的クリアリングを行うモデルを提案した.従来のシステミックモデルとの大きな違いは,事象の発生を内生化し,しかも,動的なクリアリングモデルを提案したことである.これにより,負債の持合は,企業の状態が良いときは,分散投資効果および回収率の上昇に伴うクレジットリスクの低下をもたらすが,企業の状態が悪くなると,持合の増強は逐次倒産のリスクを急上昇させ,システミックリスクの要因たりえることがわかった.他にも,デフォルトコスト,無リスク金利,事業リスクの相関からの影響について,従前では得られなかった結果を得ることに成功した.その多くは,債務の持合がもらたす,逐次倒産確率の上昇は予想よりも大きいことに起因する.またそのメカニズムについても納得的な記述に成功した.ここまでに,数値計算および計算結果の精査,執筆ともに終了し,投稿の最終準備中である. (B)多企業間のシステミックリスクに関する基礎モデルとして,企業の利得が負債の大きさに対して,単調増加にならない場合の静的モデルの研究を提案した.従来の結果を拡張して,単純な債務,株式に加えて,それらの派生証券を持ち合う場合についても,クリアリング達成の条件を示した.債務や株式に対するオプションを扱うことができる拡張になっており,応用性に優れる研究成果である.数値計算は終了し,現在,投稿のための修正を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の概要(A)で述べた成果は,基礎理論の拡張であり,優れた成果であると自負している. また,研究の概要(B)で述べた成果は,保険契約の売買を記述する上で必要な成果である.この成果の延長上に,再保険ネットワークのリスク管理があるため,研究は順調に進んでいるといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の概要(A)で述べた成果は,いくつかの点で拡張が可能で有り,優れた基礎モデルである.ひとつは,クレジットデフォルトスワップ,ひとつは,内生モデルをあえて外生化することで,二次元モデルから多次元モデルへと拡張することである. 研究の概要(B)で述べた成果は静的なモデルを用いている.これを保険契約を記述するための動的モデルへと拡張する.保険は突発事故を補填するものであるから,ポアソン過程による資産過程の記述が標準的である.ポアソン過程と構造モデルの融合には,経験および先行研究があり,まずは標準的な拡張を進める.
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