2019 Fiscal Year Annual Research Report
Integration system of traffic and energy
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18H01660
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
中川 二彦 岐阜大学, 高等研究院, 教授 (40530506)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 太陽光発電 / 電動車 / 蓄電池 / 経済性 / 環境合理性 / レジリエンス / 社会システム / エネルギー収支 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,太陽光発電(PV)に「電動車,家庭および勤務先のエネルギー発生・消費」を組み合わせたPV家庭システムと,「蓄電池電車と駅周辺施設のエネルギー発生・消費」を組み合わせたPV鉄道システムのCO2削減量,経済性,リスク適応性の効果と,提案するシステムの構築に必要な自動車や電車の機能,性能および設計指針を得ることである.1年目の2018年度は,PVの発電量,電動車,家庭および勤務先各々と全体おける,時々刻々のエネルギー需給を計算するエネルギー統合収支モデルを作成し,数値シミュレーションに必要な実績データの収集と整理を行った.2年目の2019年度は,2018年度に作成したエネルギー統合収支モデルと,収集した実績データに基づき、機器性能因子の影響度を数値シミュレーションで評価した.その成果は以下の通りである. 1.数値シミュレーション解析の結果,①PV家庭システムは,家庭のエネルギー支出(家庭と自動車合計)を70%以上削減し,かつCO2排出量を80%以上削減できる.②電動車の蓄電池は,同容量の定置型蓄電池よりもPV電力の平準化に有効である.③PV電力は,電動車を用いた方が系統経由より,効率よく供給できる可能性がある. 2.上記の1は,新エネルギーの省エネルギー利用という新たな研究領域概念に基づく研究である.その結果,提案する統合システムは,経済性,環境合理性(CO2削減効果)および災害レジリエンスの3つで,これまでのエネルギーシステムを圧倒的に凌駕する成果が得られることを明らかにした.また,電動車を利用した具体的なエネルギーシステムとして,バーチャルグリッドを提案した. 3.山陽地区(岡山)に加えて,東海地区(岐阜)におけるPV電力の発生と消費データの収集と整理を行った. 4.PVに「蓄電池電車と駅周辺施設」を組み合わせたPV鉄道システムのシミュレータ作成と解析に着手した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年度途中で所属機関を異動したものの,研究実績に示したように,①太陽光の発電量,電動車両,家庭および勤務先のエネルギー消費を組み合わせ,時々刻々の総合的なエネルギー需給を計算する非定常収支モデルに基づくシミュレータを作成した.②山陽地方(岡山県総社市)と東海地方(岐阜市)のエネルギーの発生と消費データの収集と整理を行った.③開発したシミュレータを用いた解析の結果,太陽光発電(PV)に「電気自動車,家庭および勤務先」を組み合わせたPV家庭システムでは,家庭のエネルギー支出(家庭と自動車合計)を70%以上削減しつつ,CO2排出量を80%以上削減できることや本システムが原理的に蓄電池を効率よく使えることなどを明らかにした.④PV鉄道システムについても,大きな効果が得られることが明らかになりつつある.これらの成果は当初の計画を前倒しで達成するものである. 更に,これまでの成果から,以下に示すような、将来に向けた幅広い新規研究開発が必要なことが分かってきた. 1. 新エネルギーの省エネルギー利用という新たな複合研究領域において,エネルギー変換効率の向上,負荷平準化,供給経路の最適化,省エネ機器との組み合わせによる効果拡大,余剰エネルギーを活用した社会のエネルギー回生の実現などにより,従来に比べて,経済性,環境性,レジリエンスの高いゼロエミッションシナリオの構築ができる. 2. 本研究システムが対象とする電動車を自家用車以外の電車,バス,トラック,建設機械および農機具などへ幅広く適用を拡大いる場合の設計指針とその効果. 3. 他分野の研究(気象予測,情報通信など)とのインテグレーション研究による更なるイノベーションと効果の拡大が期待できる.
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Strategy for Future Research Activity |
様々な新規研究開発の必要性が明らかになってきたが、最優先すべきは,本研究計画の速やかなる実施である.当初計画に従って,PVに「蓄電池電車と駅周辺施設のエネルギー発生・消費」を組み合わせたPV鉄道システムのシミュレーション解析と仕組みの構築を進める.更に,当初計画に追加して,PVに「路線バスと起点終点周辺施設のエネルギー発生・消費」を組み合わせたPVバスシステムについて,新規にシミュレータの作成および実績データ収集(岐阜大学~JR岐阜駅間)を行う.PVバスシステムを追加する理由は,社会システムとしての適用先が多く,その重要性と実現性が高いためである. なお,これまでの研究成果として大きな成果が期待できるPV家庭システムについては,国内の複数企業と共同研究チームを組成し,EVを用いて実際に装置を設置する実証スキームの研究開発に着手した.実証スキームでは,これまでの本研究成果を基に,別途の予算で技術開発プロジェクトを立ち上げる予定である. なお,「現在までの進捗状況」で述べた新たな研究課題については,今年度から来年度にかけて,その具体的な内容を検討し,その進め方を整理する予定である.
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