2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H01665
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
桑名 一徳 山形大学, 大学院理工学研究科, 教授 (30447429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 祐二 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50303657)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 火災 / 燻焼 / 有炎燃焼 |
Outline of Annual Research Achievements |
燻焼(火炎を生じない燃焼形態)から有炎燃焼への遷移が火災被害の急拡大をもたらす.したがって,燻焼から有炎燃焼へ遷移する臨界条件を明らかにすることは火災リスクマネジメント上重要である.しかし,この遷移現象を対象とした体系的な研究例は限定的である.本研究は,「燻焼から有炎燃焼への遷移現象の学理の探求」を目的として,理論および実験の両面からこの遷移現象の科学的解明を目指すものである.2019年度は二種類の実験を行い,それぞれに対して理論モデルを構築し,実験結果と理論解析結果を比較した. 第一の実験は,セルロース系固体燃料を対向流中で燃焼させる擬一次元実験である.対向流速度および酸素濃度を実験パラメータとし,燃え拡がり速度および温度履歴を計測した.有炎燃焼へ遷移する臨界条件(燻焼を維持できる上限界)だけではなく,消炎限界(燻焼を維持できる下限界)も求めた.この実験に対応する一次元モデルを作成し,遷移および消炎の限界条件の理論予測に成功した.モデルの予測結果は実験結果とよく一致した.さらに,モデルにより得られた燻焼温度および燻焼燃え拡がり速度が実験データと概ね一致することを確認した.なお,この対向流実験では,有炎燃焼に遷移後に定常的な燃え拡がりを維持できないという問題点も確認された.2020年度には,この問題を解決できる擬一次元実験およびその理論解析を計画している. 第二の実験は,円筒形試料の自然対流中の燃え拡がり実験である.鉛直下方燃え拡がりは二次元的,水平燃え拡がりは三次元的な現象であり,先の擬一次元実験と比較すると実際の火災に近い燃焼形態である.なおこの実験では,有炎燃焼に遷移後も定常状態を維持できる.この実験でも有炎燃焼への遷移が確認された.遷移メカニズムを検討するために自然対流を考慮した熱収支モデルを構築し,実験結果をよく説明できることを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度に計画していた実験およびモデル構築がおおむね計画通りに進行している.なお,2019年度の研究では,当初計画していた有炎燃焼への遷移条件(燻焼を維持できる上限界)に加えて,消炎条件(燻焼を維持できる下限界)についても実験および理論解析の両面から検討を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度に実施した擬一次元実験では有炎燃焼に遷移後に定常的な燃焼を維持できないという問題点があった.今後は,実験装置を改良し,燻焼状態でも有炎燃焼状態でも定常状態を維持できる擬一次元実験を設計し,実施する.内容としては,強制対流中の燃え拡がり実験を想定している.遷移および消炎の臨界条件を実験的に求めると同時に,燃焼温度や燃え拡がり速度などの理論解析の検証に資するデータを取得する. 2020年度に新たに設計する擬一次元実験を再現できる数理モデルを構築する.一次元定常モデルの構築を検討しており,シンプルなモデルにより現象の本質を明らかにすることが目的である.有炎燃焼への遷移および消炎の臨界条件の予測だけではなく,燃え拡がり速度の予測も可能にすることを目指す(定常モデルにより燃え拡がり速度を予測することは容易ではない).モデルの予測結果を擬一次元実験のデータと比較し,モデルの妥当性を評価する.このモデルにより有炎燃焼への遷移や消炎メカニズムおよび限界条件のパラメータ依存性を検討し,多次元モデル化への指標を得る. 2019年度に実施した自然対流中の燃え拡がり実験は,擬一次元実験と比べて実際の火災に近い現象であり,着火直後の火災現象を模擬するものだといえる.今後の研究では,一次元モデルを拡張し,自然対流中の燃え拡がり実験をシミュレーションできる多次元モデルを構築する.
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Research Products
(16 results)