2018 Fiscal Year Annual Research Report
レジリエンス投資のマクロ計量経済モデルシステムの構築と具体的強靭化方針の提案
Project/Area Number |
18H01679
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤井 聡 京都大学, 工学研究科, 教授 (80252469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 皓介 東京理科大学, 理工学部土木工学科, 助教 (30793963)
小池 淳司 神戸大学, 工学研究科, 教授 (60262747)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地震 / 防災 / レジリエンス / マクロ経済モデル / 被害関数 / 被害予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、南海トラフ地震などの巨大災害がもたらす国民経済への影響と対策の効果について、定量的な分析を可能にするシミュレーションモデルを構築し、今後実施されるべき我が国のレジリエンス強化施策の必要性や妥当性を検討するための技術的な枠組みを提供することを目的としている。 2018年度に実施したのは、主として、道路ネットワークに関する予測モデルの構築である。高速道路、国道、都道府県道、市町村道のそれぞれについて、道路の特性(耐震化の状況、電線類地中化の状況、道路周辺の土地の利用形態、等)と地震の規模等(震度及び津波浸水)に応じて、道路リンクが破断つまり利用不可になる確率を求めるモデルを構築するため、必要なデータの収集と、数パターンの分析を実施した。東日本大震災時の道路インフラの特性と被害データを用いてモデルを構築するが、被害については、特定の道路リンクが破断したか否かを示す直接的な調査データは存在しないため、震災前後の民間プローブデータから、道路リンクの破断状況を推測することとした。 分析の結果として、入手可能なデータから一定の精度で道路の破断確率を求めるモデルが構築されたと言える。既存の研究においては、交通インフラに関する実務的に利用可能な被害モデルが十分には検討されてきていないため、南海トラフ地震をはじめとする将来発生が予想される震災の被害予測に向けて有意義な前進ができたと言える。 ただし、橋梁の耐震化や電線類の地中化といったレジリエンス強化施策の効果については、効果が存在することは確認されたものの、その規模は想定したよりも小さなものであった。その原因として、東日本大震災時の耐震化や地中化の実施状況に関するデータが、十分に詳細な計測単位では得られなかったことが挙げられる。今後、より精度の高い分析に向けて、新たなデータの利用等を検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析は概ね、予定通りに進んでいる。道路ネットワークの被害予測モデルに関し、分析の結果、レジリエンス強化施策の効果が想定したよりも小さな値が得られたが、その原因としては、入手したデータの計測単位が十分に詳細な精度のものではなかったことが挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度以降は主として、道路ネットワークに関する被害予測モデルの精度の向上を図りつつ、当該モデルから予想される交通ネットワークの性能低下を、マクロ経済モデルに反映し、そのことを通じて、巨大地震が我が国の経済に与える影響を、GRP・GDPといった経済指標で表現するかたちで予測することを目標とする。 具体的には、道路ネットワークの被害モデルの改善のためには、より詳細なデータの入手が必要であると考えられる。これについては、引き続き、データの入手可否を検討するとともに、不可能な場合は代替手段の有無を検討していくことになる。 また、マクロ経済モデルへの反映と、経済被害の推計にあたっては、次のような作業を行うこととなる。第一に、前述の被害予測モデルから求められるのは道路リンクの破断確率であるが、ここで求められる確率から、モンテカルロ・シミュレーションを通じて道路ネットワーク全体の性能低下の程度を求める必要がある。また第二に、その性能低下を、地域内あるいは地域間の「アクセシビリティ」の低下として表現し、これがマクロ経済モデルにおける生産関数や消費関数にどのような影響を与えるかを検討することとなる。さらに第三に、本研究では、生産設備への被害がマクロ経済に与える影響についても推計することとなるが、これは阪神淡路大震災時の調査データを用いて推計することとする。そして第四に、本研究で求めることとしているのは、震災発生直後にもたらされるストック被害ではなく、その後完全な復興を終えるまでの間に失われるGDPなどの経済活動の毀損量である。そのためには、復興作業がどのような速度・プロセスで進行するかについても予測を行う必要があるが、これについては、阪神淡路大震災や東日本大震災の発生後のGDP・GRPの推移の分析から、予測モデルを得ることを目指す。
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Research Products
(4 results)