2019 Fiscal Year Annual Research Report
南九州西岸地域の副振動発生予測に向けた海洋長波監視システムとハザードマップの構築
Project/Area Number |
18H01684
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
山城 徹 鹿児島大学, 理工学域工学系, 教授 (20158174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加古 真一郎 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (60709624)
齋田 倫範 鹿児島大学, 理工学域工学系, 准教授 (80432863)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 副振動 / 発生予測 / 副振動・海洋長波監視システム / ハザードマップ / 南九州西岸地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年2月1日~3月31日に,小島漁港,枕崎漁港,崎津漁港,女島,宇治島で水位の現地観測を実施した.これらの地点と気象庁(海上保安庁)の検潮所がある福江島(中之島)の計7点の水位データをスペクトル解析,ウェーブレット解析して,海洋長波が外洋を伝搬する段階においては,小島漁港,枕崎漁港で発生した副振動の周期をもつ水位変動が特に大きい訳ではないこと,小島漁港,枕崎漁港で大きな副振動が発生したときは,沖合の海洋長波も大きくなっていることを示した.さらに,女島(宇治島と中之島)は小島漁港(枕崎漁港)で大きな副振動を発生させる危険度の高い海洋長波の監視地点として有効であることを示唆した. 副振動と海洋長波の監視地点で計測した水位と海面気圧を,協力体制を組む気象海象観測システムインテグレータのサーバーへ自動送信する観測局の設計と製作を行った.試作した観測局を自治体,漁協組合の協力の基で小島漁港に設置し,2020年1月10日から3月31日までの82日間,水位と海面気圧を時間間隔1秒,バースト時間30秒で測定して,これらのデータをリアルタイムでシステムインテグレータへ送信することに成功した.3月31日には,副振動が最大全振幅3mを超えるまで発達する状況を大学の研究室でモニターできた. FVCOMを用いた副振動の数値計算を実施して,海洋長波が様々な波向,振幅を持って浦内湾へ進入した場合に起こりうる副振動の最大波高,最大流速分布を算定し,船舶の避難場所,マグロ養殖生簀の安全な設置場所を調べた.その結果,副振動の振幅の大きさと増幅率は海洋長波の伝播角度とは関係ないこと,海洋長波の振幅が大きくなると副振動の振幅も大きくなるが,増幅率は小さくなることを示した.また,浦内湾で発生する周期24分,12分,10分の副振動の腹と節の位置をみつけ,小島漁港の船舶の避難場所,養殖生簀の安全な設置場所を示唆した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,小島漁港,枕崎漁港,崎津漁港,福江島,女島,宇治島,中之島の同時水位データを収集し,小島漁港(枕崎漁港)での副振動発生予測については,女島(宇治島,あるいは中之島)での水位観測が有効であることを示した.これまでも無人島の女島と宇治島で水位観測を行ってきたが,女島と宇治島で同時にデータを取得できたのは本研究が初めてである.また,2019年3月21日20時頃に九州西岸全域の湾や港湾で大きな副振動が発生し,これが大潮満潮時と重なった為,長崎では市中心部で冠水被害,枕崎では船舶の岸壁への衝突被害が起きた.研究代表者は10年間に渡って副振動の現地観測を実施しているが,海洋災害を引き起こすような大きな副振動を複数点で同時観測できた例は今回が初めてで,極めて貴重なデータを得ることができた.さらに,観測データの充実化を図るために,小島漁港,枕崎漁港,崎津漁港,女島の4地点に水位計を再設置し,2020年2月~3月の水位データを収集している. 副振動・海洋長波監視システムの構築については,水位計と気圧計から構成される観測局のプロトタイプ・モデルを製作し,これを小島漁港に設置して現地実験を行った結果,82日間に渡って,観測局の正常動作が確認できている.ただし,大学内に設置予定の中央監視局に導入するシステムの開発が若干遅れ,気象海象観測システムインテグレータのサーバーで水位,海面気圧データを保管している状況である. FVCOMを用いて浦内湾で発生する副振動の本計算を実施して,浦内湾の副振動と同じ周期をもつ海洋長波が様々な波向,振幅を持って湾内へ進入した場合に起こりうる副振動の最大波高,最大流速分布を算定し,当初の計画通りに,浦内湾における船舶の避難場所や養殖生簀の安全な設置場所を明らかにできた. 全体を通して,研究は順調に進んでおり,現時点では研究計画通りの成果が見込まれると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
海洋長波監視網及び副振動・海洋長波監視システム,上甑町副振動ハザードマップの構築に向けて,2018~2019年度はほぼ予定通りの研究が実施できたので,2020年度は当初の計画通りに,下記の研究内容を実施する. 海洋長波監視網の構築については,2019年2~3月に観測した水位データから,女島(宇治島,中之島)での海洋長波の監視が小島漁港(枕崎漁港)での大きな副振動の発生を予測することに有効であることが示唆されている.2020年1~3月に小島漁港,枕崎漁港,崎津漁港,女島で水位の同時観測を再度実施し,海洋長波と副振動との関連を示す水位情報の充実を図っている.2020年度は,これらのデータを解析して,監視地点の妥当性をさらに裏付けることを計画している.副振動・海洋長波監視システムの構築については,2020年12月までに,現地で観測した水位,海面気圧データを大学に設置した中央監視局のサーバーへ送信し, WEB上で副振動を監視するシステムを製作する.その後,2021年1~3月の3ヶ月間,観測局を小島漁港と枕崎漁港に設置し,作製した中央監視局の実証実験を行うことを計画している.上甑町副振動ハザードマップ構築については,浦内湾で発生する副振動による道路,家屋の浸水予測に適した氾濫解析モデルを開発する予定している.
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