2019 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation and control of hydrogen re-distribusion in Fe-based magnetocaloric materials
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18H01697
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
藤田 麻哉 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究チーム長 (10323073)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磁気熱量効果 / 遍歴電子メタ磁性転移 / 水素拡散 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁気冷凍への応用が有望視されているLa(Fe,Si)13H 磁気熱量材料において、水素は動作温度を室温近傍に制御するために不可欠である。しかし、熱量効果の源で ある磁気1次転移の現れる強磁性-常磁性の2相共存状態において、当初は両者の水素濃度が等しくとも、やがて常磁性相から強磁性相に水素が移動し、濃度が異 なる2相にスプリットするため、動作温度が試料中で分布してしまう。この“スプリット現象”は、磁性に依存した異常拡散(up-hill拡散)であり、水素原子の 化学ポテンシャルと磁気との関係など、その学理は全く不明である。 本年度は、前年度に実施した磁気転写を併用した磁気偏光顕微観察の結果から示唆された粒界3重点のスプリットへの寄与をより明確にするために、熱処理時間を変化させて金属組織を観察し、スプリット現象との関連を調査した。これまで長時間熱処理がスプリットに影響することは確認されていたが、その要因として結晶粒のライプニングあるいはオストワルド成長が重要であることが理解された。また、本年度はさらに、磁気ドメイン境界の挙動について動的な把握を行い、ドメイン境界トラップには粒界の影響だけでなく、長距離的な双極子相互作用が影響していることも把握した。この双極子相互作用による動的挙動への影響は、特に磁場誘起転移の場合に発生する反磁場アレストと名付けたドメイントラップ現象が強磁性-常磁性2相共存とその境界接合をより顕著化する。磁場中でのスプリット現象の”加速化”が確認されていたが、この1要因として結晶組織とは別のドメインとラップ現象の寄与があることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究進展の支障となったのは、世界的なヘリウム枯渇による低温冷媒の供給不安定による測定装置の予定外の運行停止と、さらに年度終了期に生じた新型コロナウイルスによる学会中止(情報収集と成果発表)があったが、研究自体とは関係しない外的要因であったため、課題の進捗としては大きな遅れを生じることなく実施できた。特に、磁気核生成・成長とスプリット現象が関連することを指摘したのは本研究が世界初であり、理学工学両面でのインパクトは大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
スプリット現象を低減させる添加元素の選定は、現象の基礎学理と磁気冷凍用材料開発の両面で重要となるが、設計指針には第一原理計算などを用いながら効率的な候補探索を行う予定である。また、対象化合物であるLa-Fe-Si系において、スプリット抑制後の動作温度制御のためにCeあるいはPrドープが行われるが、磁気制御には化学圧力に関係した原子半径で整理できる一方で、スプリット現象発生にもこれらの元素差が生じており、その説明は現時点ではできていない。そこでこれらの元素ドープがどの様にスプリット現象に影響するのかについても解明していく予定である。
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