2019 Fiscal Year Annual Research Report
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18H01699
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
山本 明保 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (20581995)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 超伝導 / バルク材料 / 磁場応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属系超伝導体最高の臨界温度と高い上部臨界磁場をもつMgB2は、ヘリウム温度(4.2 K)よりも高温での応用が可能な超伝導材料として注目されている。超伝導バルクとしての応用を考えた場合、MgB2は粒界弱結合の影響がなく、無配向多結晶体であっても巨視的な超伝導電流を得やすいため、多結晶形態のバルクに高磁場を捕捉することが期待できる。また、捕捉磁場の空間的・時間的均一性にも優れる。一方で、反応時に空隙や不純物が生じるため、これらの低減による捕捉磁場強度の向上が課題となっている。そこで本研究では、高密度かつ高純度な大型MgB2バルク体の新しい作製法を開発することを目指し、マグネシウム気相輸送法(MVT: Mg Vapor Transport method)を検討した。 MgB2バルク体の前駆体となる円盤状ホウ素ペレットとマグネシウム源とを分離して配置し、マグネシウム源から蒸発したマグネシウム蒸気を多孔隔壁を介してホウ素部に輸送、拡散、反応させるMVT法を開発している。現在までに、直径20 mm、厚み2 mmの円盤状MgB2バルク体を得た。MVT法により作製したMgB2バルク体の充填率は従来のin situ法と比較して約1.6倍高く、20 Kにおける臨界電流密度は2倍以上向上した。次に、円盤状バルク体を冷凍機冷却下において静磁場着磁後、ホール素子によりバルク表面中心の捕捉磁場を評価した。10 Kにおいてバルク表面で1 Tを上回る磁場を捕捉し、温度の上昇とともに捕捉磁場は減少した。20 K、30 Kにおいては、10 Kにおける捕捉磁場の約77%、約38%の磁場をそれぞれ捕捉し、超伝導転移温度である38 Kにおいて消失した。バルクの両面での捕捉磁場の差は数%程度であり、この結果は循環電流の均一性が良好であることが示唆された。また、鉄系超伝導体についても予察的な試作と検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記載の実績が得られており、おおむね研究計画に沿って順調に進捗しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は微細構造と局所組成の評価を重点的に進め、反応過程における組織生成機構を明らかにするとともに、直径のより大きな円盤状MgB2バルク体を作製することを目指す。捕捉磁場特性の測定を行い、新規プロセスによる超伝導バルクのポテンシャル評価を行うことを予定している。
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