2018 Fiscal Year Annual Research Report
誘電体ナノ分極界面を利用した超高出力全固体リチウム二次電池の実現
Project/Area Number |
18H01707
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
寺西 貴志 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90598690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安井 伸太郎 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40616687)
中山 将伸 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10401530)
秋本 順二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究チーム長 (20356348)
岸本 昭 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30211874)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 全固体電池 / 誘電体界面 / 急速充放電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は全固体リチウムイオン二次電池の活物質-固体電解質層間に,誘電体ナノ分極界面を導入することで空間電荷層中のLi移動を促進し,キャパシタ並みの出力特性,すなわち秒単位での超急速充放電の実現を目指している.我々はこれまで従来の有機電解液系リチウムイオン電池において,誘電分極が活物質-電解液界面のLi電荷移動抵抗を顕著に軽減させることを実証してきたが,本知見を全固体電池に応用展開させたものである. 本年度(H30)の目的として,誘電体ナノ分極界面が全固体電池における空間電荷層中のLi移動を活性化するか否かを検証する.効果が確認された場合,来年度以降,分極界面が寄与する抵抗低減メカニズムを電池素反応レベルで特定する.続いて,電荷移動抵抗を支配する誘電体の構造および材料パラメータ(界面密度/比誘電率/分極種)を調査し,出力特性が最大となる最適ナノ複合構造を決定する予定である. 強誘電体BaTiO3(BTO)と正極活物質LiCoO2(LCO)の複合正極を汎用ゾルゲル法により作製した.粒径約45nmのBTOナノ粒子をLCO表面に高分散状態で担持した.固体電解質として非晶質Li3PO4層を製膜した.正極電荷移動が律速抵抗となるよう擬似全固体構造として評価したところ,未処理LCOは10Cレート[1C=160mA/g(LCO), 6分間満充放電]で容量が全く得られていないのに対し,BTO担持正極では同レートで50~60mAh/gの容量を維持していることが分かった.疑似全固体電池において誘電体界面の効果が確認された. 続いて,バルク型全固体電池において効果を検証した.硫化物系電解質を用いたバルク型電池において,室温0.05Cでの試験を行った.10サイクル後容量の初期容量に対する保持率は未処理LCOでは約69%であったのに対し,BTO界面を導入した電池では約91%であり,サイクル特性が改善した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは疑似全固体電池において誘電体界面の効果を検証した.強誘電体BaTiO3(BTO)と正極活物質LiCoO2(LCO)の複合正極を汎用ゾルゲル法により作製した.粒径約45nmのBTOナノ粒子をLCO表面に高分散状態で担持した.固体電解質として非晶質Li3PO4層を0.75μmの厚さでRFスパッタ法により正極シート上に成膜した.セルは正極電荷移動が律速抵抗となるよう擬似全固体構造とした.最大電流レート10C [1C=160mA/g(LCO), 6分間満充放電]において,未処理LCOは電気容量が全く得られなかったが,BTO担持正極では同一レートで50~60mAh/gの容量を維持した.従来の液系リチウムイオン電池(液系LIB)に比べて電池特性は劣化しているものの,誘電体ナノ分極界面が全固体LIBの出力改善に対して効果的である可能性が示された. 続いて,バルク型全固体電池を用いて評価を行った.正極と硫化物系電解質を360MPaで加圧成型した後に対極に,Li-In合金を接合させて電池を作製した.室温,0.05Cでの試験を行った.0.05Cにおいて初期放電容量の改善は見られなかったが,10サイクル後の初期容量に対する保持率は未処理LCOを用いた電池は約69%であったのに対し,BTO界面を導入した電池では約91%であり,サイクル特性が改善することが分かった.BTO界面はサイクル特性の改善に寄与することを確認した.今後,条件最適化あるいは酸化物系電解質を用いた実験により,さらに詳細にBTO界面の効果を検証する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度,疑似全固体電池および硫化物系全固体電池において,BTO誘電体界面がセル特性を一定程度改善することが分かった.来年度以降は,酸化物型全固体電池においても同様に出力改善効果があるかを検証する.急速充放電改善効果が確認された後,その特性改善要因を素反応レベルで明らかにするとともに,改善に寄与する誘電体界面パラメータの決定を行う. 酸化物型全固体電池についてはガーネット系酸化物電解質を用いる.電解質支持型構造において誘電体の効果を検証する.各種BTO担持量,焼成条件を検討し,出力特性が最も改善する誘電体担持構造を決定する.酸化物系全固体電池は硫化物系に比べ界面抵抗が大きいため,誘電体界面による大きな抵抗低減効果が期待できる. 続いて,特性改善に寄与するセル素反応特定に関して,全固体LIBは4つの素反応,(i)固体電解質中のLi拡散,(ii)空間電荷層中のLi移動,(iii)活物質表面での反応起点サイトへのLi移動,(iv)活物質内Li拡散,に分割できる.現在推定する出力改善描像では,誘電体-活物質-固体電解質三相界面近傍の空間電荷層内にLiが引き寄せられ,頻度因子が増大することで(ii)の抵抗が低下すると予想する.しかし,一般に素反応(ii),(iii)における時定数はオーバーラップするため,汎用のインピーダンス測定のみから両者を解析的に切り分けることは困難である.そこで分担者中山らのグループと協働で第一原理計算と電気化学インピーダンス法を組み合わせた解析手法を検討する.誘電体界面の有無に対して,活物質-固体電解質界面におけるLiの化学ポテンシャル分布を可視化することで上記(ii),(iii)に由来する素反応抵抗の定量的評価を行う.
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Research Products
(5 results)