2018 Fiscal Year Annual Research Report
誘電体における光誘起物性の電子顕微鏡オペランド測定による微視的起源解明
Project/Area Number |
18H01710
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐藤 幸生 九州大学, 工学研究院, 准教授 (80581991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森分 博紀 一般財団法人ファインセラミックスセンター, その他部局等, 主席研究員 (40450853)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 誘電体 / その場観察 / 光 / 電場 / 電子顕微鏡 / 圧電体 / 歪み / 強誘電体 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画の初年度である平成30年度には、1.試料への光照射、2.試料への電圧印加および電流測定の2つの機能を同時に使用可能であり、なおかつ、透過型電子顕微鏡内でx,yの2軸方向にそれぞれ±20度の試料傾斜が可能試料ホルダーの設計および制作を株式会社メルビルと共同で行った。制作した試料ホルダーのテストを行い、光照射が可能であること、10Vまでの電圧印加ならびに1 nAの電流測定が可能であること、x,yの2軸方向にそれぞれ±20度の試料傾斜が可能であることをそれぞれ電子顕微鏡内で確認した。 また、これと並行して同試料ホルダーでの観察の際に使用するグリッドの設計を行い、試料作製を行った。我々が用いていた従来型のグリッドと比較して、大型化に伴う(従来の3mmφ×0.2mmtから4.0 mm × 9.0 mm × 0.1 mmt)による試料作製ならびに導通確保の簡易化が図られて、研究の迅速化が進んだ。 本年度は同試料ホルダーならびに従来型の電場印加試料ホルダーを用いて誘電体ペロブスカイト化合物の電場印加その場電子顕微鏡観察を主に行った。主な観察対象はチタン酸バリウム(BaTiO3)、マグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)、PMN-PT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3)とした。BaTiO3においては電圧の印加による特異な電界誘起歪みの発現が確認されたほか、PMN-PTにおいては電場の印加により単位格子中での鉛イオンの変位方向が変化する様子が確認された。また、PMNにおいては極性ナノ構造の電場に対する応答を実空間でリアルタイム観察することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究初年度に光照射電場印加ホルダーの設計および制作を行うことに成功し、実際に制作した試料ホルダーが所望の性能を有することを確認することができ、当初の計画通りに試料ホルダーの開発を行うことができた。また、同試料ホルダーで使用するグリッドの設計ならびに改良も順調に進めることができ、結果的に研究の迅速化が図られたことは計画以上の進展であった。 誘電体ペロブスカイト化合物に対して行った電場印加その場電子顕微鏡観察では、電場印加中の状態における原子位置の測定精度が計画以上に向上し、材料解析をより精密に行える可能性が高まったことは計画以上の進展であった。従来の我々の報告では、単位格子における格子定数の測定誤差が10 pm程度、イオン変位の測定誤差が20 pm程度(Sato et al., Appl. Phys. Lett., 2017.)であったのに対して、これらの誤差は現在半分程度にまで減少しつつある。 チタン酸バリウム(BaTiO3)に対して行った観察結果では、予期していなかった異常な電界誘起歪み現象が見られており、全く想定外の結果であった。これらに加えて、マグネシウムニオブ酸鉛(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3)およびPMN-PT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3)においてはその場観察を進めることができていることは計画が順調に進行している証左である。これらの試料については二年度目から光を照射しながらの電場印加その場観察に順次移行していく予定になっており、そのための基礎データを取得できたという意味でも有意義な結果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
計画初年度において光照射電場印加ホルダーの開発が無事に終了したことを踏まえて、二年度目にあたる平成31年(令和元年)度には同試料ホルダーを用いた光照射・電場印加その場観察を行う。まず最初に光照射現象が実際に観察できることのデモンストレーションとして、金ナノ粒子をテスト試料として用いて、光照射による構造変化の観察を行う。低倍率像・高分解能像の観察から光照射下条件における電子顕微鏡像の像質の確認、電子回折パターンによる格子定数の測定精度の確認、ならびに高分解能観察における原子位置測定精度の確認をそれぞれ行う。 金ナノ試料を用いたデモンストレーションが終了したら、誘電体ペロブスカイト型化合物を用いた観察を行う予定である。対象とする予定の試料は比較的高い光歪特性を示すことが報告されているPLZT(La添加チタン酸ジルコン酸鉛)のセラミックスや比較的高い光起電力を示すことが報告されている鉄酸ビスマス(BiFeO3)の薄膜やマンガン(Mn)添加BaTiO3のセラミックスなどを予定している。光歪特性を示す材料については光を照射しながらのドメイン構造観察や電子回折パターンならびに原子分解能像からの格子定数測定を中心に行い、光起電力を示す材料については光照射時のドメイン構造観察ならびに電流測定を中心に行う。得られた成果については順次学会発表ならびに論文発表を行っていく予定である。
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[Journal Article] 企画にあたって2018
Author(s)
赤瀬 善太郎, 木口 賢紀, 佐藤 幸生, 田中 智仁, 田辺 栄司, 寺本 武司, 仲村 龍介, 本間 智之, 横山 賢一
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Journal Title
Materia Japan
Volume: 57
Pages: 583~583
DOI
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