2019 Fiscal Year Annual Research Report
C/Cコンポジットの溶融塩電解表面改質による超軽量超耐熱材料の創成
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18H01716
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
竹田 修 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60447141)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 幸司 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (20533665)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | C/Cコンポジット / 耐熱材料 / 電解 / SiC / 電気化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで実用化されてこなかったC/Cコンポジットに耐酸化性被膜を形成し、革新的に高い耐用温度(約1300℃)を有する、超軽量・超耐熱材料を創成することを目標とした。本研究対象をガスタービン用耐熱材料に応用することで、現行材料のNi基超合金と比べ、火力発電の発電効率の抜本的な改善が期待される。具体的な実施項目としては、溶融塩中でのイオンの輸送速度と電極反応速度、電極内の原子の拡散速度、電解諸条件が被膜の機械的・化学的特性に与える影響を研究し、溶融塩電解表面改質でC/Cコンポジット表面を珪化することでSiC被膜を形成することとした。特に、パルス電解法を用いて、従来法では困難であったマイクロクラック内のSi析出、充填、微細孔封止を行うことを目指した。 これまで、溶融塩中のSiイオンの輸送速度に比較して、固体中のSiの拡散速度が極度に遅く、SiとCを共析する必要があることがわかった。そこで、平成31年度(令和元年度)は、溶融塩中からのSiとCの共析を試みた。まず、サイクリックボルタンメトリ法を用いて、LiF-KF-KCl-5%Li2CO3-1%K2SiF6浴中の電気化学反応を調査した。その結果、CO32-イオンからのC析出を示す還元電流と、SiF62-イオンからのSi析出を示す還元電流が観測され、CおよびSiイオンが共存する浴から両者の還元析出が可能であることがわかった。そこで、CO32-イオンとSiF62-イオンの濃度比を変えながら、定電流電解を用いてSiCの共析を試みた。その結果、CO32-イオン過剰組成ではCが、SiF62-イオン過剰組成ではSiが、それぞれ析出した。両者の中間域ではSiが析出した。様々な組成と電流密度を検討したが、現時点でSiCが生成する条件は見いだせておらず、SiCとして同時析出ささることは難しいことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
SiC皮膜を電気化学的に形成させるための最も単純な方法は、炭素源を基板(固体)として用意し、その表面でSiイオンを電気化学的に還元し、Si原子を拡散・反応させる方法(電気化学的還元拡散法)である。つまり、SiCの構成成分のうち、片方のSiのみ溶融塩側から供給する方式である。この方法は、Siイオンのみを電気化学的に操作すればよいため、電解の制御幅が広く、制御がし易い。そのため、本研究で最初のアプローチ法とした。ただし、SiCは高融点(2730℃)であり、ダイヤモンドに類似した結晶構造を有するため、構成元素間の拘束が強く、拡散速度が遅いことが予想された。結果的には、前述の通り、SiC固体皮膜中のSiの拡散速度が極端に遅いことが分かったが、これは想定範囲内の結果である。この結果から、Siイオンのみを供給する方式では厚いSiC皮膜を形成することはできないことが明確になった。 よって、第二のアプローチ法として、SiとCの共析法を検討した。この方法は、SiだけでなくCも溶融塩側から供給する方式である。この方法は、還元電位の異なる二つのイオンを電気化学的に操作しなければならないため、制御が容易でない。平成31年度の検討の結果では、電解浴からSiあるいはCとして析出させることはできたが、両者を同時に析出させることはできなかった。これは、還元電位の差の影響が予想以上に大きいためであり、また、僅かな電解条件(濃度、電流密度)の違いによって、どちらか一方に析出が偏ってしまうためと考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、平成30年度はシンプルな電解還元拡散法を検討し、固体中のSiの拡散速度が極度に遅く、SiCの厚膜化が困難であることが分かった。それを受けた平成31年度(令和元年度)は、SiとCの共析を検討し、SiあるいはCの析出は可能だが、両者が同時析出する条件は見いだせなかった。そこで、令和2年度は、基板である炭素材を改質することで、Siの拡散を促進させることを狙う。具体的には、C/Cコンポジット基板を、大気下で弱酸化させ、表面近傍のCマトリックスを燃焼除去する。その空隙に、溶媒に分散させた黒鉛粉末を導入し、密度の低いC領域を形成する。こうして作製した改質C/Cコンポジット基板に電解還元拡散法を適用し、表面近傍の空隙をSiCで封止し、耐酸化性を発現させる。特に着目する点は、電極最外層での電析物の形態および封止性である。 本研究は代表者(竹田)、分担者(安田)、研究協力者(大学院生)三名で遂行する。溶融塩電気化学の理論予測を分担者が、金属組織学の理論予測を代表者が、電解実験・耐酸化性試験の実行を代表者と研究協力者が行う。 本研究は、溶融弗化物を扱う高温プロセスであり、加熱用の電気炉は既に整備済みである。また、溶融塩を使う研究は反応容器が特殊であるため、専用の反応容器を自作する必要がある。装置の設計は申請者が行い、資材を購入して学内の技術部(製作室)で製作する。研究分担者の安田とは、学会活動を通して常時、連絡を取り合っており、定期的に進捗報告会を行っている。また、研究協力者として申請者の研究室に所属する大学院生(1名)に研究補助をしてもらっている。
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