2018 Fiscal Year Annual Research Report
格子欠陥によるフォノン散乱の波長依存性測定と部分還元ルチル熱電材料の高性能化
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18H01737
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 克志 神戸大学, 工学研究科, 教授 (30236575)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 武司 神戸大学, 工学研究科, 助教 (10781833)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フォノン / 散乱波長 / 面欠陥 / 不純物原子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ルチルを部分的に還元することで導入される面欠陥の周期の変化と熱伝導率の低下割合を部分還元量が異なる試料を作製することで明らかにした.熱伝導率の測定には比較的信頼性の高い定常法を用いることとし,まず定常法の測定系の構築を行った.また,電気伝導率を測定するためのファンデルポー法による電気抵抗測定系も構築し,測定された熱伝導率から電子による熱伝導分を取り除くことで格子熱伝導率を算出した.測定された格子熱伝導率は予想通り面欠陥濃度の上昇に伴い単調に低下したが,その低下率は濃度の上昇とともに減少し格子熱伝導率はある値に漸近していくことが明らかになった.これは,この結晶内にこの面欠陥では散乱されない熱伝導フォノンの成分が存在することを示している.また,同様に格子熱伝導率を低下させる不純物元素(Zr)を添加した時の熱伝導率の低下割合について実測した.面欠陥によってある程度まで減少した試料では不純物元素の添加による原子サイズの欠陥の導入によっても残留していた格子熱伝導率を減少させることはほとんどできなかった.これらから,面欠陥と不純物元素の両者が同じ波長域の熱伝導フォノンを散乱していることが確認された.原子サイズの欠陥によるフォノンの散乱は比較的短波長であることが分かっているため,面欠陥によって散乱されているフォノン成分も比較的短波長成分であることが推測される.次年度は熱処理によって数100nmの大きさの析出物を形成する方法を確立させるとともに,このような比較的大きな欠陥による格子熱伝導率の低下の割合の測定を行う.これにより比較的長波長のフォノンが熱伝導に及ぼしている割合が明らかになると期待している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
熱伝導に寄与しているフォノンの波長領域の中で,比較的短い波長領域に対する実験を終えることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は比較的長波長領域のフォノンの影響を明らかにすることを目指す.これを定量的に明らかにすることができたならば,最終年度において両者の相乗作用がどの程度見られるかを明らかにし,全波長領域で適切な散乱源を配置する試料作製方法について検討を行う.
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