2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H01739
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中島 英治 九州大学, 総合理工学研究院, 教授 (80180280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 重人 九州大学, 総合理工学研究院, 助教 (00804741)
光原 昌寿 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (10514218)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | クリープ / 微細組織 / 変形理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、クリープ変形における亜粒界強化のメカニズムを明らかにすることを目的としている。これまで経験的な理解のみに留まっていた高温での亜粒界強化メカニズムについて、申請者が過去に行った研究結果から導き出した「亜粒界による抵抗をThermalな現象として取り扱う仮説」について、実験的検証と理論構築を加えて学理へと昇華させる。具体的には、すでにいくつかの実験結果が得られつつある既存フェライト系(マルテンサイト系)耐熱鋼について、固溶強化型合金の高温変形に関する基礎研究において確立された試験方法と理論的取扱いを応用して亜粒界による粘性抵抗の定式化ならびに理論モデルの構築を行い、対象材料を先進材料であるデルタフェライト系耐熱鋼やFCC系耐熱合金に拡張していくことで、亜粒界強化理論の一般化を目指すものである。 これまでの研究で、まず、超高精度単軸クリープ試験により10^-10 s^-1オーダーの極低速クリープ変形の測定に成功した。さらに、フェライト系耐熱鋼では高応力・高ひずみ速度域と低応力・低ひずみ速度域では最小ひずみ速度の応力依存性が異なることを短時間の超高精度単軸クリープ試験から明らかにした。この最小ひずみ速度の応力依存性の変曲点は材料の初期転位密度に依存しており、転位密度が高い材料ほど変曲点が高応力側にシフトすることが明らかになった。このことは転位密度によって決定される非熱的降伏応力を境にしてクリープ変形時の転位運動の様式が異なっていることを意味していると考えられる。具体的な転位の運動様式の検討のために、最小ひずみ速度の応力依存性が異なる領域で応力瞬間負荷時に生じる塑性ひずみの大きさを比較したところ、高応力側では瞬間塑性ひずみが生じたが低応力側ではこれが生じなかった。すなわち、高応力側では転位は自由飛行的な挙動を示すのに対し、低応力側では粘性的な挙動を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究で、超高精度単軸クリープ試験により10^-10 s^-1オーダーの極低速クリープ変形の測定に成功し、高応力側と低応力側では最小ひずみ速度の応力依存性異なること、この変曲点は材料の初期転位密度に依存し、転位密度が高い材料ほど変曲点が高応力側にシフトすること、高応力側では転位は自由飛行的な挙動を示すのに対し、低応力側では粘性的な挙動を示すこと、などの申請時に推定された結果が実験的に明らかになっており、研究は概ね順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、事前の熱処理によって微細組織を変化させ、それらを網羅的に定量評価したフェライト系耐熱鋼について、高ひずみ速度領域(~10-4 s-1)から極低ひずみ速度領域(~10-11 s-1)までの広いひずみ速度範囲でのクリープ試験とクリープ応力急変試験を行い、亜粒界による抵抗と転位速度の関係を整理する。転位が亜粒界と相互作用することによって生じる粘性的な抵抗力の定式化に引き続き取り組む。
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Research Products
(2 results)