2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a non-destructive method to study hydrogen behavior and hydrogen embrittlement resistance using muon spin relaxation spectroscopy
Project/Area Number |
18H01747
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
西村 克彦 富山大学, 大学院理工学研究部(都市デザイン学), 教授 (70218189)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 健二 富山大学, 大学院理工学研究部(都市デザイン学), 教授 (00209553)
赤丸 悟士 富山大学, 研究推進機構 水素同位体科学研究センター, 助教 (10420324)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | アルミニウム合金 / 水素脆性 / 水素原子拡散 / ミュオンスピン緩和法 / 材料加工 / 材料組織 / 自然時効 |
Outline of Annual Research Achievements |
温室ガス排出量削減のために水素を車両燃料に利用し、エネルギーダムとして液体水素を利用する動きがある。6000系アルミ合金はこれらのタンク(貯槽)のライナ材料として有力な候補材である。一般に6000系アルミ合金は耐水素脆性に優れているが、純粋なAl-Mg-Si合金は耐水素脆性が相対的に低いことが知られている。添加元素が格子間にいる水素原子の拡散を抑制し、水素脆化を抑制していることが伺える。本研究では、近年実験精度が飛躍的に向上したミュオンスピン緩和法を応用し、6000系アルミ合金中の水素原子の捕獲位置と拡散挙動を解明し、水素脆性を抑制する工業的手法を探索する。更に、確立した研究手段で水素脆性が顕著な7000系アルミ合金中の水素挙動を解明する。よって、基盤材料となるアルミ合金の選択肢を広げ、水素エネルギー社会の安全性を高める。本研究の問いは、“アルミ合金中で水素原子はどのような位置に捕獲されて、どのような経路で拡散するのだろうか?”。“アルミ合金中で水素原子の拡散を抑制する元素は、なにか?” この問いに対する解答は、水素脆性過程を解明し、対策を設計する上で重要である。 本研究では、新たにミュオンビームラインで、アルミ合金に水素をチャージする装置(オンライン水素チャージ装置)を作製し、水素拡散の時間変化をリアルタイムで観測することを行う。アルミ合金に水素チャージする場合、表面の酸化物が障害となり、内部に拡散しないことが多い。そこで、イオンガンを利用して、直径50mm、厚さ1mmのディスク状試料の片面から水素イオンをインプラントする。アルミニウム中の水素拡散実験によれば、温度20℃で、水素の拡散率は、2.3x10-11m2/sであり、約10時間で1mm程度浸透すると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルミニウム合金に水素をインプラントするイオンガンおよびその周辺機器を設計・作製・性能試験を終了した。株式会社エイブイシーのACIG-3(加速電圧3kV、エミッション電流30mA、イオン電流3μA)を本体とし、制御電源ACIG-3P-2を附属させた。照射中に試料温度が上昇することを抑制するために、液体窒素冷却試料ステージを特注で附属させた。試験的に純度99.99%のアルミニウム板に水素イオンをインプラントし、ミュオンスピン緩和実験をRuthford-Appleton研究所および大強度陽子加速器施設J-PARCで行った。イオンインプラント電流量から、水素原子注入量を50ppm程度と見積もったが、ミュオンスピン緩和の効果は観測できなかった。同時に放電加工法で水素を注入したアルミ試料では、10ppm程度の水素濃度で、水素原子によるミュオン緩和効果が観測された。 現在、実験を行った試料の水素脱離スペクトルを測定中であり、イオンガンによる水素インプラント関する情報を収集し、改善を行う。
|
Strategy for Future Research Activity |
イオンガンにいる水素インプラントを長時間継続し、水素濃度を上昇させることを試みる。また、MgとCuは、比較的水素と結合エネルギーが高いと言われているので、Al-0.5at%MgとAl-0.2at%Cu合金にインプラントを行い、ミュオンスピン緩和実験および水素脱離測定を行う。10ppm以上の水素濃度が達成できるようになったら、同じ条件で重水素をインプラントした試料でミュオンスピン緩和実験を行う。 正ミュオンは、アルミニウム中で化学的には水素イオンと同様に振る舞う。ミュオンスピン緩和スペクトルから、捕獲率と緩和率の温度依存性から、水素イオンの拡散エネルギーを推定できる。補助的に陽電子消滅実験を行い原子空孔周りの電子密度を求める。その結果を基に電子密度計算と拡散エネルギー計算を行い、ミュオンの拡散経路を明らかにする。正ミュオンと水素原子の質量差を補正し、水素原子の拡散経路を推定する。
|
Research Products
(6 results)