2019 Fiscal Year Annual Research Report
動的ぬれの学理解明に基づく粒子積層膜創成プロセスの革新
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18H01748
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
福本 昌宏 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80173368)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 溶射 / 溶射粒子 / 粒子偏平 / 動的ぬれ / 遷移温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年度目の本年は以下の実験の実施を予定し,対応する成果を得た. 実験④/Cu粒子を数水準の雰囲気圧力の基に(Cu, SUS, ガラス)各基材上に溶射し,各基材上での遷移圧力と基材熱伝導率等熱物性値との関係性を基に,遷移圧力を決定する基材側因子の影響を明らかにする.ただし,本実験の実施において所有減圧溶射装置のチャンバー内溶射ガンに不具合があり,安定した実験の実施が困難なこと,また正常に動作させるための修理には高額の費用を要することが判明したことから,本実験は断念せざるを得なかった. 実験⑤/(Ni, Ni-10Cr, Ni-20Cr, Ni-30Cr, Ni-40Cr, Ni-50Cr, Cr)溶射粒子を数水準の基材温度の基にSUS基材上に溶射し,得られた各溶射粒子の遷移温度とNi-Cr組成比との関係を整理する.併せて大気中での溶射に伴う粒子表面酸化状態をXPS分析し,表面酸化層形成能の粒子/基材間ぬれ促進への関与の傾向性を把握する.実験の結果,粒子遷移温度がCr含有量の増加に伴い線形的に低下すること,XPS分析の結果,Cr量の増大に伴い粒子表面酸化能も対応して増大すること等が分かった.本来,SUS基材表面は(Fe,Cr)複酸化物層を有することから,Cr量の増大に伴う粒子表面酸化能の増大は,固体酸化物に対する液体酸化物の組み合わせによる粒子/基材間化学的ぬれ性環境の改善を通じ,粒子/基材間動的ぬれの向上をもたらすこと,動的ぬれ改善が溶射粒子の基材表面への接触能の増大をもたらし,これが連鎖的因果関係として,粒子偏平形態の遷移的変化をもたらすこと等の諸点を明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年度めの実験において減圧溶射装置の想定外の不具合により,関連する研究内容の実施はできなかったが,それ以外の実験内容はすべて当初の計画通りに進捗しており,おおむね順調に推移していると自己評価する.2年度目の取り組みで明らかにした内容を基に,最終年度の研究へと継続することが可能であることから.
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Strategy for Future Research Activity |
Ni-Cr系溶射粒子/加熱(SUS)基材の組合せにおいて,各溶射粒子の遷移温度とNi-Cr組成比との関係を整理する.各溶射粒子の飛行中表面酸化層形成状態および基材上Splatの表面および裏面酸化状態をXPSの深さ方向分析解析により調査し,酸化状態と遷移温度との関係性により,粒子/基材間動的ぬれに及ぼす粒子表面エネルギー,ひいては酸化能の関与の傾向性を把握する. 上記傾向性把握のさらなる深堀りが重要なことから,(Ni, Ni-30Cr,Cr)溶射粒子/加熱(SUS)基材の組合せにおいて,各基材温度で捕集したSplat裏面の急速凝固微視組織(チル晶)のEBSD観察を行い,粒子材質,基材温度とチル晶形成状態との関連性を通し,粒子/基材界面動的ぬれ性の関与性を明らかにする.
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