2019 Fiscal Year Annual Research Report
放射光XAFSその場観察による溶融塩電析ミクロ機構の解明
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18H01759
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
打越 雅仁 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (60447191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠田 弘造 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (10311549)
秋山 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (80746751)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | タンタル / 溶融塩電解 / X線吸収分光 / 平滑電着 / その場観察 / 局所環境構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、Taの溶融塩電解において、時間分解溶融塩電解XAFSその場観察法により、電解時のTa周囲の局所環境構造を調査し、Ta電析状態との関連を明らかにして、Ta平滑電析条件の確立を目指すものである。 昨年度は、改良型高温XAFS測定装置の開発、およびラボスケールでのTa溶融塩電解試験を実施して、その場観察に使用する実験条件の探索を行った。得られた電着条件は、α-Ta膜が生成するF/Cl比が95/5、電解温度650度C、電流密度250A/m2である。 本年度は、その場観察の予備試験として、溶融塩中でのTa周囲の環境局所構造のF/Cl比依存性を調べることに注力した。従来、Cl量の増加に伴い、TaへのCl配位数の増加が予想されていたが、実際には、元々配位しているFのTaからの距離が長くなることを示唆する結果が得られた。すなわちClのFとの置換配位は起こらないが、F配位が外れやすくなり、電着が容易になると推測される。上述のように、ClのFとの置換配位は困難であると考えられ、得られたXAFSスペクトルの主成分分析によるFとCl配位数変化のF/Cl比依存性の解析は取りやめた。 その場観察の予備試験で、改良型高温XAFS測定装置の問題点を抽出した。試料セルの寸法の調整が必要であることが分かり、新たに設計し直した。測定に際して、チャンバー内を不活性雰囲気にする必要があり、当初Heガスで満たすことを想定していたが、Heガスでは熱伝導が良いために熱が逃げてしまい、十分な加熱が難しかった。そこで、真空状態を試したところ、試料は効率よく加熱でき、また懸念された試料の揮発も試料セルの蓋をしっかり接着させることで抑えられることが分かったので、真空中での測定を行った。 以上のように、Cl量増加に伴うTaとFの距離が長くなること、改良型高温XAFS装置での安定した測定条件を決定したことが今年度の成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標である、Ta周囲の局所環境構造について概ね順調に調査を完了した。ただし、当初想定していたFとClの置換配位は起こらないことが結果として得られ、主成分分析によるFとClの配位数のF/Cl比依存性の解析は取りやめた。また、来年度のその場観察を確実に行うための条件を確実にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、放射光施設を使用する。国内放射光施設の内、大学共同利用機関法人・高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーの共同利用実験G型課題に本研究課題を申請し、採択された。よって、計画にしたがって、フォトンファクトリーを使用して、Ta溶融塩電解その場観察を実施予定であるが、COVID-19の影響により十分な実験時間を確保できない可能性が高い。この場合、比較的短時間で成果を得られるFe、Crの塩化物錯体分布について実験を実施する。
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