2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Study of Nucleation Phenomena at the Template Interface and the Application for Production of Uniform Crystalline Particles
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18H01765
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
滝山 博志 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40251582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 翔慈 群馬工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (50735008)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 晶析 / 鋳型界面 / 異相界面 / 結晶多形 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機結晶は医薬品等に多用されているが、近年の医薬品結晶は難溶化傾向にあり、体内での溶解し易さを担保することが必須となっている。そこで、シングルミクロンサイズ以下で、より溶解度の高い結晶形(多形)を選択的に製造することが要求されている。本申請課題では、鋳型剤を含んだ溶液にて気液界面を作成するような簡単な操作で、鋳型上に有機結晶の核を同時発生させ、さらに結晶成長を制限することで、微粒子でしかも構造制御された高品質な有機微結晶粒子群を創製する手法を提案する目的で実施した。まず初年度は、予備実験で確認してあるグリシン(結晶化物質)-L-ロイシン(構造メッセンジャーとしての鋳型剤)-水(溶媒)を用いて気液界面での核化成長現象の正確な把握、特に結晶粒子間の排他的相互作用の解明についての検討を行った。具体的な実験条件は、次の通りである。所定濃度になるようにL-ロイシンを添加したグリシン飽和水溶液を調製した。溶液をシャーレに注いだときに気液界面が作製されることになる。溶液の注入開始時間から気液界面上で起きる結晶化現象を光学顕微鏡で観察した。顕微鏡観察の結果、鋳型界面上の結晶化現象は、1つの起点から結晶粒子群が生じ、界面上に展開されてゆく結晶間の反発力によって新たな結晶を生ずること無く、結晶が界面を広がってゆくと考えられた。界面上に存在する結晶粒子群の1つの結晶を基準にしたとき、各結晶の距離と速さの関係を整理した。その結果、距離と速さは比例関係となっていることがわかった。従って界面上に展開された結晶は同時多発的に発生したのではなく、ある起点から発生することが知見として得られた。同時に鋳型界面に析出した結晶間の反発力の存在が、結晶間に新たな結晶を生じさせない、すなわち、結晶個数密度が増加しなかった理由であることも新たに予想できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
医薬品や食品製造での晶析操作では、結晶粒子群の取り扱いの難しさがある。その理由は、粒径分布が広いことや形態または多形が混ざること、すなわち、結晶粒子群が不均一であることである。本申請課題では結晶粒子群の不均一さを解決する新たな手法を検討している。本年度は、まず鋳型界面上での結晶成長の様子を観察した。結晶粒子群は等間隔に並んでいるように見えたため、近接する結晶の間の距離を測定した。結晶間距離の分布は単分散であったため、結晶間に相互作用が存在する可能性が明らかになった。一部の結晶粒子群を動かしても、等間隔であることは維持され、結晶間に新たな結晶は生成されなかった。従って結晶間は核化に対して排他的であることが示唆された。このことを検証するため、晶析で一般的に核化促進のために行われる刺激を与える操作を、鋳型界面に対して行った。界面を波立たせる刺激を与えても、結晶個数は劇的には増加しなかったため、結晶間には排他的な領域が存在することが確証的になった。排他的な領域が存在する理由は、結晶間に何かの力が存在するためだと考え、この力をRepulsive Forceと名付けた。新たな核化に対してRepulsive Forceが影響していると推測された。さらに粒径が鋳型界面では均一である理由を推測するために、結晶化現象を経時的に観察した。その結果、粒径の均一さは結晶粒子群の特異な広がりによって引き起こされることが推測された。特異な広がりは結晶間で余剰な核化が起きていないことを意味した。そして余剰な核化を起こさせない方法が、短い核化期間の実現に使える可能性が出てきた。この特異な広がりもRepulsive Forceの存在によって説明可能であったことから、今までの界面現象関連の研究にはない新たな概念を提出できており、概ね順調に研究は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
過飽和溶液中に有機分子の単分子膜が存在すると、膜の構造が鋳型として働き、配向が制御された結晶が成長することが報告されている。このように、鋳型分子の分子構造が結晶成長の鋳型となり結晶構造を決定し得ることがわかってきている。医薬品は結晶多形(同一分子でありながら、結晶構造すなわち分子パッキングが異なる結晶で、溶解度や結晶外形が異なることで溶解性能が異なる)を有するものが多く、このような鋳型効果を積極的に応用できれば、本年度得られた気液界面を利用した均一な粒子径である結晶粒子群に、多形の均一性を併せ持たせることが可能となることが予想される。従って、鋳型界面での結晶粒子群製造は、粒径分布と結晶多形とを同時に制御でき、より均質な結晶粒子群製造を実現できる可能性が充分にある。結晶多形をうまく制御し、準安定多形の結晶粒子群を安定的に製造できれば、溶解性が高くBio-availabilityの高い医薬品を製造できる可能性がある。また、結晶粒子群の粒子径制御を行うために単位界面積あたりの核発生数が、いかなるパラメータによって調整可能かを明らかにすることで、界面積当たりの核発生数を増大させるための検討も今後行うこととする。これは大量の核発生を、限定された気液界面で、しかも結晶多形を制御しながら起こすことができることを意味している。鋳型界面を粒径制御のためだけでなく、結晶多形をも制御した核化誘発の場として積極的に利用した国内外を通じても前例がない研究となる可能性を有している。このような鋳型効果を積極的に応用することが可能となれば、鋳型分子の選択や設計で有機結晶の多形制御が可能となり、準安定多形の結晶粒子群を安定的に製造できる様になり、溶解性が高くBio-availabilityの高い機能性結晶粒子群の安定的な製造へ展開できる可能性がある。
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