2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Study of Nucleation Phenomena at the Template Interface and the Application for Production of Uniform Crystalline Particles
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18H01765
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
滝山 博志 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40251582)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
工藤 翔慈 群馬工業高等専門学校, 物質工学科, 助教 (50735008)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 晶析 / 鋳型界面 / 異相界面 / 粒径分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
医薬品製造工程では、所望の粒径でかつ単一分散な有機結晶粒子群が求められる。しかし長い核化継続時間が存在し、核化数の制御が困難である場合には、目的品質の実現は難しい。そこで本研究では結晶化の場を限定した鋳型界面に着目した。結晶化現象には、結晶相が現れる核化プロセスと、成長プロセスがあるが、特に核化はその後の成長をも支配するため、緻密な制御が要求される。従来、核化は確率論的な現象であるため、核化の制御は困難な課題とされてきた。ところが、これらの制御を行わない限り所望の粒径でかつ単一分散な結晶粒子群をつくるためのブレークスルーは見出せない。 過飽和溶液からの結晶化は、まず核化から始まる。その後も過飽和が存在していれば、新たな核化が起こる。このように長時間にわたって核化が起きると分布が悪化する。また、同じ析出量であれば、核の個数によって、達成する粒径が決まるので、核の個数の制御は重要となる。従って、所望の粒径でかつ単一分散な結晶粒子群を製造するためには、①核化の継続時間を短縮し、②核の個数を制御する手法を見出せれば、解決可能となる。既に報告した鋳型界面研究では、核化を気液界面作製という比較的容易な操作で制御できる可能性が見出されている。そこで、この2点の具体的手法の検討を行ってきている。鋳型界面上に展開した結晶粒子間にはRepulsive Forceと名付けた反発力が存在し、それが新たな核化を抑制することが新たに見いだされてきている。ただし、鋳型界面であっても設定した条件によっては凝集することを新たに見出した。 そこで、本来単一分散な結晶粒子群を得られる鋳型界面で、凝集する条件について明らかにすることで単一分散化の手法を明確化することとした。この様な鋳型界面上の結晶粒子群の結晶化現象の性質を詳細に検討することで結晶粒子群の単一分散化の指針を提案できるようになってきている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鋳型界面上で確実に核発生を起こすために乾燥空気中で気液界面を作製し、鋳型界面上に析出した結晶粒子群を観察した。その結果、条件によっては同一界面上で接触して凝集晶が生成している様子が見られた 。凝集結晶と非凝集結晶とを識別したところ、凝集晶にはある特徴的な結晶形態が見られたため、凝集晶を結晶学的に分類した。鋳型界面上に析出する結晶はピラミッド形で底面を界面にさらした形状で析出する。また、このように界面に析出するグリシン結晶は結晶学的な軸(a軸およびc軸)を明確に決めることができる。さらに、多くの凝集晶は2つの結晶が合一した状態で構成されており、またその凝集の様子も特徴的な合一でありT字状に接触し合一していた。鋳型界面で析出する結晶はa軸方向に長いA種と、c軸方向に長いB種が存在することがわかった。さらに、凝集晶はA種の長軸にA種の短軸が接触した凝集晶、A種の長軸にB種の短軸が接触した凝集晶、B種の長軸にA種の短軸が接触した凝集晶、B種の長軸にB種の短軸が接触した凝集晶の4種類のパターンに分類できた。 これを基にして凝集晶を分類すると、c軸方向に長いもの同士で接触する、B種の長軸にB種の短軸が接触したパターンが支配的であると明らかになった。そこで、c軸方向に長い結晶だと凝集しやすいと考え、3つ以上の結晶が接触した場合にもこのパターンが相当するか検証した。すると、どちらの軸方向に長いかで結晶粒子群を分類すると、c軸方向に長いものが凝集晶を形成し、a軸方向に長いものが非凝集晶を形成しているのが判明した 。したがって、結晶学的な軸方向の長さと凝集の有無には相関があることが判明した。以上より、結晶形態を制御すれば非凝集結晶を製造できる可能性を見いだすことができ、今までの界面現象関連の研究にはない新たな方針を提出できており、概ね順調に研究は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
鋳型界面を晶析場として、所望の粒径でかつ単一分散な有機結晶粒子群を製造するためには、①核化の継続時間の短縮と②界面単位面積あたりの結晶個数の制御を実現する必要がある。いままで、余剰な核化を抑制する機構の解明、単一分散化の障害となる凝集の防止法の提案などを行っていているが、次に、(A) 1起点あたりの結晶数と(B) 界面単位面積あたりの起点の数のそれぞれが決定される機構を解明する。 (A) 1起点あたりの結晶数の決定機構を検討するために、起点作製直後を観察する実験を行う。これまでの実験で、気液界面を結晶化物質と同種の結晶で刺激する操作を行うと、核化の起点を作れることが観察されている。また、1起点あたりの結晶数に影響を与える実験条件として、過冷却度が考えられるので溶液の過冷却度を変更しながら、意図的に種晶接触操作で起点を作り、過冷却度が1起点あたりの結晶数に与える影響を調査する。 (B) 界面単位面積あたりの起点の発生数を推定するために、1起点あたりの結晶数が明らかになった実験条件で、起点を増加させることを狙った操作を行う。具体的には、界面の複数箇所に同時に種晶を接触させる操作を行う予定である。界面の単位面積あたりの結晶個数を観察し、それらの数値から発生する結晶数を推算する。 (A)と(B)のそれぞれについて得た知見を活かして組み合わせることで、鋳型界面の単位面積あたりの結晶個数の制御手法を検討する。鋳型界面上の結晶化は、核発生に特異性がある他、結晶形態についても興味深い現象が観察されている。それは、同一界面であれば、鋳型界面に析出した結晶形態は揃っているが、条件によってはアスペクト比が変化する現象である。いままでの研究成果を考え合わせると、鋳型界面を利用すれば粒径だけでなく、形態をも均一に制御でき、凝集をも防止できる可能性がある。
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